苦役列車

愛すべきゲス野郎

なんて汚らしくて、なんてゲスくて、なんて有り余るマイナスの力に溢れているのか。主人公の貫多の持つ強烈なインパクトで、賛否両論あろうとも見応えのある映画である。

時代はバブル前夜の1986年。中学校を卒業してから19歳までずっと日雇いの肉体労働者として生活する北町貫多(森山未來)は、日雇い労働が終われば近所の定食屋で酒飲んでゲロ吐いて風俗店行くゲスの極みみたいな人間。家賃も4か月滞納し、追い出される日も間近だ。そんな友達が出来ようもない生活をしている貫多だが、職場で新入りのスマートな専門学校生、日下部正二(高良健吾)と出会い、親しくなっていく。日下部は、貫多が思いを寄せているが話しかけた事もない古本屋勤めの学生、桜井康子(前田敦子)にもわざわざ声をかけて貫多と友達になるべく行動してあげる如才なさを見せる。3人はさらに親しくなり、貫多はやっと19歳で初めて男の子らしい青春を感じる様な日々を過ごすのだが・・・。

まずこの映画に共感を覚えたのが、当時の服装や雰囲気がしっかり再現されている事だ。このレビューを書いている自分は、映画の中の貫多や日下部より6歳若い計算になるのだが、着てる服とか住んでるとことかやってる事が自分の学生の頃とほぼ同じ。なんだか懐かしかった。当時は男子学生のほとんどがたばこ吸ってたし、誰かの家で安酒飲んでごろ寝してたし、GパンにYシャツやポロシャツをインしてた(笑)。そして、当時の男子学生は圧倒的に日下部の様なスマートな若者ではなく貫多の側の人間だった。自分に自信がないのに虚勢を張る。女の子とどう接していいか分からず意味不明の言動に及ぶ。まあ貫多ほどゲスくはなかったとしても、若い男子はこれと似た様なもんだったのだ。

それにしてもこの映画、次から次へとゲスが出てくる。出てくる人も海も部屋も工場も風俗店も、清潔感は皆無だ。なので、見ていて不愉快になる場面はたびたびあるかもしれない。しかし前述した様に、学生時代の若い頃の自分となぜか重なり、腹は立ってもなぜか貫多を憎めないのだ。むしろ、飾らず自分を出せるという事で、言い方はおかしいが素直なゲスっぷりに感動すら覚える。言いきってしまえば、19歳の男子なんて、だいたいがゲスなのだ。そこを理解出来ていれば、この映画はすんなり心に届く。

原作は、実は映画以上に暗く救いがない。映画化するにあたって、いくらなんでも希望も華もないから前田敦子演じる原作にはない女性のキャラクターを入れたのだろう。それが、女性に対してどう接していいか分からない若者はこうなんだという具体的な描写となり、観る人が共感するための一助になっている。自分にとっては遠い昔の事を思い出す様な映画となったが、今の若者が観て貫多というキャラクターにどういう感想を抱くのか。若い人に観て欲しい一本である。

▼作品情報▼
監督  :山下敦弘
原作  :西村賢太
脚本  :いまおかしんじ
音楽  :SHINCO
キャスト:森山未來、高良健吾、前田敦子、マキタスポーツ、田口トモロヲ

2012年7月14日(土)全国ロードショー

公式サイト:http://www.kueki.jp/
(C)2012「苦役列車」製作委員会

トラックバック URL(管理者の承認後に表示します)