彩り豊かな文化を感じる珠玉の作品がいっぱい! Sintokシンガポール映画祭、3年ぶりに開催

日本初上映となる「HERE」(ホー・ツーニェン監督)

近年世界の映画祭で注目を集めているシンガポール映画を集めたSintok2012シンガポール映画祭が、2012年5月12日(土)に幕を開ける。
小さな都市国家でありながら、中華系、マレー系、インド系住民が共存する彩り豊かな民族性と、過去のイギリス植民地時代、第二次世界大戦中の日本軍による占領など、東西の様々な国々が“通過”していった影響を受けて育まれた独自の国際性を持つシンガポール。そこで生み出される映画たちはジャンルや題材もバラエティに富み、使用される言語も英語に北京語、福建語など実に雑多で一つの国の映画とは思えないほど。これまで“マーライオン”や某携帯電話会社のCMに登場したリゾートホテル“マリーナベイ・サンズ”程度の印象しか持っていなかった観客にも、新しい発見と驚きを与えてくれるに違いない。
2009年に続き3年ぶり、2度目の開催となる本映画祭は、そんなシンガポールの“過去から現在へ繋がる”佳作たちと、未来のシンガポール映画界を担う若手の短編集まで幅広く取り揃えたラインナップ。5月20日(日)までの9日間、東京・シネマート六本木にて開催される。12日のオープニングプレミアチケットは、「12Lotus」上映に加え、イベントとロイストン・タン監督も参加するディナー・レセプション付き(前売り3,500円、当日販売もあり)。大使館も御用達のシンガポール料理を味わえるとのことで、目にも舌にも楽しめる企画が嬉しい。


Shintok2012シンガポール映画祭の見どころ!

ロイストン・タン監督特集

「12Lotus」

シンガポール一の人気監督ロイストン・タンの作品世界が分かる特集上映。映画祭オープニング作品の「12Lotus」(日本初上映)は、シンガポールの伝統的な歌謡ショー「歌台(ゲータイ)」のスターを目指した少女が男に翻弄されて苦難の半生を歩む姿をミュージカル風に描き出す。タイトルの「12Lotus」はゲータイでよく歌われる有名な福建語歌謡の名曲。語られる女の境遇はかなり悲惨で痛ましいのだが、陽気な音楽にカラフルな映像、そしてどこか笑いを誘う劇画的なキャラクター造形で、全編を貫くテイストはカラッと明るい。

「12Lotus」(08)※オープニング作品
「881 歌え!パパイヤ」(07)
「4:30(フォーサーティ)」(05)
「15:The Movie」(03)
「Short Lah!ロイストン・タン短編集」

 

長編作品

「Sandcastle」

クロージング作品となる「Sandcastle」は、2010年カンヌ国際映画祭批評家週間でも上映された。亡き父の青春時代を辿ることで、大人の階段を上がっていく青年が主人公。フレッシュで瑞々しい作品だが、主人公や彼を取り巻く人々の関係性を通して、シンガポールという国の歴史やアイデンティティを問うている実は骨太な一本でもある。同作のブー・ジュンフォン監督は、同性愛が法律で禁じられているシンガポールにおいて、ゲイであることをカミングアウトしている。一見ソフトでキュートなイケメン青年でありながら(個人的感想で失礼!)、表現を通じて社会に切り込む姿勢に強い問題意識と将来の大器を感じさせる。
こちらもカンヌ映画祭に出品された(09年監督週間)「HERE」は、マルチなアーティストとして活躍するホー・ツーニェンの長編第一作目。現実世界から隔絶された病院のような施設で謎に満ちた患者たちに施される“治療”の様子を、現代アートのような独特の構図で見せていく。観客の感受性が試される作品といえる。

「Sandcastle」(10年、ブー・ジュンフォン監督)日本初上映※クロージング作品
「HERE」(09年、ホー・ツーニェン監督)日本初上映
「アーミー・デイズ」(96年、オン・ケンセン監督)日本初上映
「青い館」(09年、グレン・ゴーイ監督)
「素晴らしき大世界」(10年、ケルビン・トン監督)
「海南、潮州と白いブラ」(10年、ハン・ユークアン監督)

 

中・短編作品

「インヴィジブル・シティ」

短編作品のクオリティの高さに定評があるシンガポール映画界。Shintok2012では、カンヌ国際映画祭等で次々と作品が上映されているエリック・クー監督の初期作品“蔵出し”上映のほか、02~11年の各年を代表するシンガポール短編映画“過去の10年”、そして次世代を担う新進監督による近作集を紹介する。日本では“清潔で整った先進的な国”というイメージが強いシンガポールだが、実は中国生活が長い筆者でも驚くほどの厳しい言論統制が敷かれている。同性愛の禁止や、英語・北京語以外の使用言語の制限(多くの中華系の住民は南方方言を話しているにも関わらず、である)など、映画制作に対する政府からの圧力は強い。そうした状況にあって、規制に縛られるにくい短編映画には作り手のパーソナルな思いがより色濃く反映されており、シンガポールという国を知る入り口としても非常に興味深い。
また、シンガポールの独立以前からの歴史と、歴史の記憶をたどる人々に焦点を当てたドキュメンタリー「インヴィジブル・シティ」は、占領時代の日本との関係にも触れる内容で見逃せない。

エリック・クー・セレクション:「Pain」(94年)、「Zombie Dogs」(04年)
「インヴィジブル・シティ」(07年、タン・ピンピン監督)
Singapore Short Cuts~シンガポール短編映画の十年
Singapore Showcase~Sintok2012近作短編傑作選

Text by:新田理恵


Shintok2012シンガポール映画祭 開催概要

*5月12日(土)16:00~20:30
ロイストン・タン監督を迎えてオープニング作品
『12Lotus』上映+スペシャル・イベント+シンガポール料理ディナー付き
オープニング・レセプションを開催!チケット@3,500円。

【開催期間】2012年5月12日(土)より20日(日)まで
【会場】シネマート六本木(映画館)www.cinemart.co.jp/theater/roppongi
【チケット】当日券@1,300円。
3回券@3,600円 (前売と会期中劇場での限定枚数発売)。
*3回券では、オープニング・プレミアとクロージング上映にはご入場いただけません。

「オープニング」と「クロージング」作品を劇場とちけっとぽーと店頭
にて前売販売。www.ticketport.co.jp

※ Sintokは有志により運営される非営利の映画祭です。
映画祭を支援下さる「Sintokフレンズ」(特典付き)を募集中です。
お問い合わせ:<sintok@mail.goo.ne.jp>まで。
Sintok シンガポール映画祭
http://www.sintok.org https://www.facebook.com/SintokSFFT
https://twitter.com/#!/SintokFilms

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