『インセプション』 すべては、監督の頭の中。

一言で言えば「夢泥棒」。テーマ自体は壮大なものではなく、パーソナルな小さい世界のお話。映画好きであれば、似ている映画を色々思い出せるだろう。私自身も、『オーシャンズ11』『マトリックス』『アバター』などを思い浮かべた。

面白いのは、ストーリーと言うよりも、スバリ構造と見せ方。同時多発的な危機の作り方として、幾層もの夢をつなげて見せると言う方法、アイディアそのもの、である。文字にしてしまうと、突飛でも何でもないかもしれない。が、これが「コロンブスの卵」。『メメント』もそうだけど、クリストファー・ノーラン監督は、シンプルな物語を見せ方ひとつで変えるのがとても巧い。

本作もまた、ひとつひとつのエピソードは単純でも、組み合わさると案外複雑。決してわかりやすい映画ではないと思う。むしろ着いていくのに必死、途中からはそれすら諦めてしまう(笑)。確信犯的に観客は置いていかれるのだ。でも、流れに思い切り身を任せ、何処に着地するかという不安を抱かずにジェットコースターに乗っていられる楽しさと安心感がある。

そして、オチ、すなわち着地点に到達したとき、「ああ、結局わたしたちは監督の頭の中の『遊園地』で遊ばされてたんだ」と思い知らされるのだ。「犯罪現場は、お前の頭の中。 (YOUR MIND IS THE SCENE OF THE CRIME.)」というのは本作のキャッチコピーだが、映画自体が所詮「監督の頭の中」に過ぎない。決してガッカリという意味ではない。私は思わず、こんな映画を作る監督の頭の中はどうなっているのだ!とツイッターでつぶやいてしまった。

さらに、驚きと言う点では「CGを極力使っていない」という映像面も言える。3D時代が到来し、もう映像でびっくりさせられることはそうそうないのではと思っていたが、まだまだそんなことはない。

原作モノやリメイクなど、他人のアイディアを拝借することが多くなっている昨今の映画業界は、この映画が描こうとした世界にも通じる。自身で脚本を手掛け、独自の手法で挑もうとする監督の姿勢に賞賛を送りたい。

オススメ度★★★★★

Text by 外山 香織

【監督】【脚本】クリストファー・ノーラン
【製作総指揮】クリス・ブリガム
【音楽】ハンス・ジマー
【キャスト】レオナルド・ディカプリオ/渡辺謙/ジョセフ・ゴードン=レヴィット/マリオン・コティヤール/エレン・ペイジ/トム・ハーディ/キリアン・マーフィー/トム・ベレンジャー/マイケル・ケイン

『インセプション』公式HP

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  1. みれか

    参考にします。