ハンター

孤高のハンターと個性派俳優の邂逅

© 2011 Porchlight Films Pty Limited, Screen Australia, Screen NSW, Tasmania Development and Resources and Nude Run Pty Limited.

個性派俳優ウィレム・デフォー久々の主演映画『ハンター』。この映画は彼の代表作のひとつになったと言っていいだろう。この圧倒的な存在感は彼でなければ出せない。

バイオ・テクノロジー企業のレッドリーフ社からの依頼でオーストラリアのタスマニアに派遣され、絶滅したと言われていたが一匹だけ生き残っているとの情報を得たタスマニアタイガーを見つけ出し、捕獲・射殺しサンプルのみを採取する仕事を請け負った凄腕ハンターのマーティン・デイビッド(ウィレム・デフォー)。そこで現地ガイドのミンディ(サム・ニール)に世話されて宿泊する事になった家には、夫のジャラが長く行方不明のため体調不良となり寝たきりの母親ルーシー(フランシス・オコナー)と、幼いが利発な娘サスと、無口なサスの弟バイクが住んでいる。電気も通らずお湯も出ない家に辟易し、近くで宿を求めるも、環境保護目的の大学教授と偽って来ているマーティンに、森の木を切る木材の仕事を邪魔されると思っている現地の労働者や店の主は冷たい。
仕方なく世話された家に泊まり、そこから森へ何日も入りタスマニアタイガーを探すマーティン。最初は理由も分からずただ請け負った仕事を終えようとするだけのマーティンだったが、家族の話しや現地の人達の事を知り、森の中に何か異質な気配を感じるに至って、この仕事にだんだんと疑問を感じ出す・・・。

この映画、最初はタスマニアの大自然とハンターのシーンがただただ続き、ストーリーも人間関係も遅々として進まない。いろんな説明をあまりしない映画なので、何が起こるのか途中までさっぱり見当もつかない。本当にいるかどうか分からない動物を10日以上も森の中で寝泊まりして探すのだから、ある意味リアルだとも言えるのだが、この映画大丈夫か?と思ってしまったのも事実。しかし、中盤になって何かがおかしいという思いがハンターから消せなくなった瞬間、物事が一気に進み出し映画のテンポが勢いを増す。それがサスペンスにドライブをかける。この作り方、とてもうまい。低空飛行から一気に上昇する高揚感。その瞬間が、この映画を観る楽しみのひとつだと感じた。

もうひとつの見どころは、主役のハンターの判断力。仕事を請け負うプロというものは、今まさに目の前にあって処理しなければならない事を瞬時に判断する能力に優れているのだろう。とまどいや悩みが生じる前に既に判断は決していて、判断より先に行動があるかの様。おかしいと思った事はすぐ調べる。獲物を見つければ躊躇なく射殺する。人との関わりを持ちたくなどない性格なのに、目の前にいる世話になった家族に愛情を感じる。そこに一切の迷いがないハンターの行動は見ていて胸がすく思いだ。

ウィレム・デフォーが持つ俳優としての雰囲気と、この冷静なハンターのキャラクターはピッタリ合っている。映画化にあたり製作陣はデフォーを主役にと熱望したそうで、それが正しかった事は映画を観れば納得してもらえるだろう。

おススメ度:★★★★☆

キャスト: ウィレム・デフォー、フランシス・オコナー、サム・ニール
監督  : ダニエル・ネットハイム
製作  : ビンセント・シーハン
原作  : ジュリア・リー
脚本  : アリス・アディソン

2011/オーストラリア/シネマスコープ/100分

2012年2月4日(土)より丸の内ルーブル、新宿ミラノほか全国公開

© 2011 Porchlight Films Pty Limited, Screen Australia, Screen NSW, Tasmania Development and Resources and Nude Run Pty Limited.

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