中国インディペンデント映画祭2011~トークイベント「第六世代から独立電影へ」レポート

王宏偉さん(左)と市山尚三さん


今年で3回目となる「中国インディペンデント映画祭」がポレポレ東中野で開催中だ。4日には、ジャ・ジャンクー監督作品『一瞬の夢』(98)や『プラットホーム』(00)に主演していた王宏偉さんが会場に招かれ、東京フィルメックス・プログラムディレクターを務める市山尚三さんを聞き手に、「第六世代から独立電影へ」というテーマでトークイベントが行われた。

中国映画界で「第六世代」と呼ばれる監督の一人、ジャ・ジャンクー監督とは北京電影学院の同期だという王さん。もともとは監督科を希望していたが、条件が満たせずに(王さんいわく、監督科は“背が高くなければダメ”らしい)映画理論科に入学。俳優になろうとは、まったく考えていなかったという。「ジャ監督に巻き込まれた」と、役者として出演した理由を説明する王さん。それからというもの、「中国映画界に“混”(フン:だらだらと過ごすというニュアンス)してきた」と、やや自嘲気味に言ってのけるが、インディペンデント映画をサポートする「栗憲庭電影基金」の代表も務めるなど、幅広く活動してきた。
「この基金はもともと、栗憲庭(リー・シェンティン)という中国の有名な映画評論家が創設したものです。中国のインディペンデント映画をより発展させようというのが目的で、映画祭をやりつつ、08年からは映画学校も始めました。若い学生もいますが、社会経験を積んだ30~40代、なかには50代になって入学する人もおり、彼らに機材の使い方から脚本の書き方、編集といった一連の映画作りに必要な内容を教えていきます」
30~40日間ともに過ごしながら、映画製作を学んでいく。修了生には、既に自分で作品を撮り始めた者もいるといい、活動は実を結びはじめている。
学校がある宋庄という村は、北京から車で1時間程度の郊外に位置する。アーティストのアトリエが集まるエリアとしても近年知られるようになり、同基金が主催するインディペンデント映画祭「北京独立電影展」も開かれる。「私たちの映画が観られるのはもちろんですが、勢いのある現代美術作家が集まり、素敵なカフェやバーもある。機会があればぜひ足を伸ばしてみてください」と、王さんも宋庄の魅力をしっかりPRしていた。
最後に、最近、王さんが結婚したという話題に。中国版ツイッター“微博”で「あの小武(『一瞬の夢』で王さんが演じた役の名)が結婚するのか!」と話題になったことに触れ、「『一瞬の夢』も『プラットホーム』も中国で公開されていないはずなのに、いきなり話題になっているなんて面白い」と市山さん。「中国でインディペンデント映画というと、イコール地下映画というイメージがありますから、私たちは“地下工作者”だと思われています。秘密裏に仕事をしているイメージなので、そういう人の情報として速いスピードで広まったのでは(笑)」と返した王さんの、有名人として扱われることに照れたような表情を浮かべていた姿が印象的だった。

たとえお金にならなくても、今撮るべきものを撮る、という作り手の熱意が伝わる中国のインディペンデント映画。ドキュメンタリーを中心に、中国初のインディぺンデント長編アニメなど充実したラインナップで贈る中国インディペンデント映画祭2011は、12月16日(金)まで開催されている。
公式HPはhttp://cifft.net/index.htm

(取材・文 新田理恵)

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