「地球にやさしい生活」世界が注目!ニューヨーク在住の家族が始めたチャレンジとは
2006年、作家のコリン・ビーヴァン、妻のミシェル、2歳の娘イザベラの3人家族は地球に優しい生活を始めた。消費生活に疑問を感じていたコリンが、環境に優しい実験生活をネタに本を執筆するためだった。
ところが、家族が住んでいる街は大都会ニューヨーク!妻は買い物大好きでスタバ無しでは生きていけない雑誌編集者。「セックス・アンド・ザ・シティ」に出てくるような典型的なニューヨーカーだ。「このままでは糖尿病になる」と医師に言われていたのもあり、最初は実験生活に前向きだったが・・・。夫が提示した生活は「電気もダメ」「トイレットペーパーもダメ」など、想像をはるかに超える徹底したものだった。
果たしてこの実験生活は一年間続けられるのだろうか?
このドキュメンタリーは家族に完全密着し、実験生活の始まりから終わりまでを追っている。彼らの喜びや挫折を繰り返し見ているうちに、共に生活を体験しているような一体感を覚えていく。常に「やってみなければ、わからない」というスタンスで挑戦しているため、一方的に考えを押し付けられるようなこともなく、「自分ならどうするか」ということを一緒に考えながら見ることになる。コリンの言動を正当化するようなアプローチではなく、「やっぱりそれは難しいよね」とか「これなら出来そう」というような議論の余地が、見る側にちゃんと残されている作品なのだ。
人間ドラマからも目が離せない。とくに妻ミシェルの存在がこのドキュメンタリーにリアルさと、このチャレンジに説得力をもたらしている。実験内容を聞かされたときの拒否反応や、たまに家族の目を盗んでやるルール違反は案外共感できる人も多いのでは。会社勤めをする彼女には困難なチャレンジも少なくない。会社の同僚による誹謗中傷にめげず、いや、しばしば心折れ、泣きながら、このチャレンジを続けていこうとする姿は感動的で共感を誘う。チャレンジを通して“何が不要で、何が必要か”を確信したときの彼女の表情はとてもスッキリしていて、エコ生活を始めようと考えている人の背中を力強く後押しするのではないだろうか。
エコに関する活動というのは、少なからず個人の価値観や環境に左右される。コリンのチャレンジに対して賛否両論あるのは自然な反応であると思う。しかしこのドキュメンタリー意図は、賛否の議論以前の、「果たしてこのままでいいだろうか」と考え直さずにはいられないインパクトを与える、というところにあるのだと思う。
彼らのチャレンジはNYやアメリカのみならず、日本をはじめアジア、ヨーロッパでも報道され、コリンのブログ(No Impact Man.com)は雑誌「TIME」が選ぶ“環境に関する世界の注目サイト”のTOP15に挙げられた。もはや誰も彼らを無視することができないのだ。
全国順次公開中!
Text by 鈴木こより
オススメ度:★★★★★(できることなら地球上全ての人に見てほしい)
原題:NO IMPACT MAN
監督:ローラ・ギャバート、ジャスティン・シャイン
出演:コリン・ビーヴァン、ミシェル・コンリン
2009/アメリカ/92分/アメリカンビスタ/カラー/ステレオ
配給:アンプラグド
クレジット:(c)Oscilloscope Laboratories,2009