カンパニー・メン

所属する物とは

(C)2010-JOHN WELLS PRODUCTIONS

これは身につまされる映画だ。アメリカと日本ではエグゼクティブの稼ぐ額は違うといえども、この様な状況に陥った時はどの国も同じなのだ。有り体に言えば、この物語はリストラされた40代・50代・60代サラリーマンの話し。

リーマンショック下の不況で株価対策に追われるGTX社。そこで大幅なリストラを敢行。リストラになったのは37歳の販売部長ボビー(ベン・アフレック)、もうすぐ60歳になる叩き上げの重役フィル(クリス・クーパー)、社長の親友で副社長のジーン(トミー・リー・ジョーンズ)。先にリストラされたボビーとその家族を中心に物語は進んでいく。

ボビーは妻と一男一女、年収12万ドル、大邸宅、愛車ポルシェ、趣味ゴルフという幸せのモデルタイプみたいなエリートサラリーマン。それがある日突然リストラされ数時間で会社を追い出されてしまう。そこからの顛末といったらもう既視感あり過ぎでも見ていられない。不況で職自体少ないのにプライドが邪魔して就職活動もうまくいかないまま収入が途絶え、家も愛車も手放しゴルフ場の会費も払えず気持ちが荒んでしまう。この辺り、普段虚勢を張っていても実は精神面で弱い男の本質を余すところなく表現している。そう、地位や肩書や、自分が他人から評価されているという自信。そんな物で男という生き物は出来ているのだ。それがあっという間になくなってしまった男の悲哀、自らに置き換えて考えるともうホラー映画に近いものがある(笑)。

この映画、三者三様のリストラ模様を平均的に描かず、ボビーを中心に描いた事で大事なものが何かが見えたのだと思う。プライドをズタズタにされ落ち込んだボビーだったけど、決して何もかも失った訳ではない。夫に贅沢を戒め自らがパートに出る妻のマギー(ローズマリー・デウィット)、父親の境遇を子供ながらに理解しプレゼントのゲームを返品する息子、普段ボビーと折り合いが悪いのにボビーのために仕事を作ってやらなきゃいけないと思い赤字の請負仕事を引き受けたマギーの兄で工務店を営むジャック(ケヴィン・コスナー)。そう、所属する会社を失って自分の存在に意味を一瞬見出せなくなったボビーだけど、そこには自分を思い遣ってくれる一番大切な所属先があった。それに気付いた時に、ボビーに新たな光が見えてくる。

本当の事を言えばちょっと出来過ぎだとも思うし、リストラ前は高額収入を得ていい生活してたんだから不景気になったら大変なのは当たり前じゃないかとも思う。でも、総じてカンパニーマンというのはよく働く人種だと思うし、特に高額収入を得るカンパニーマンは仕事量も多くなり様々な物を犠牲にもする。自分がサラリーマンだから言うのではないけど、サラリーマンに限らず真面目に働く人達やリストラされた人達に、この映画のセリフだけでも聞いて欲しいと思った。

「いい時も悪い時もある。結果が出るのは最後だ。」「仕事はきっと見つかるわ。あなたを求めてる人がきっといる。」「子供もご両親も私もいるでしょ。私がついてる。」と。

おススメ度:★★★★☆

Text by 石川達郎

監督:ジョン・ウェルズ

出演:ベン・アフレック、トミー・リー・ジョーンズ、クリス・クーパー、ケヴィン・コスナー

9月23日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開

公式サイト:http://companymen-movie.com/
(C)2010-JOHN WELLS PRODUCTIONS

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