アジョシ:記者会見

ウォンビン、愛を語る~天才子役キム・セロン、イ・ジョンボム監督とともに来日

(左から)イ・ジョンボム監督、ウォンビン、キム・セロン

昨年度の韓国№1ヒットを記録し、韓国アカデミー賞<大鐘賞>8部門にノミネートされ、主演男優賞を受賞するなど、国内主要映画賞を総ナメにした『アジョシ』。心を閉ざし、街の片隅でひっそりと質屋を営む男テシクが、麻薬密売事件に巻き込まれ、組織に誘拐された孤独な少女ソミを救出するため、ただ一人、巨悪に立ち向かう物語である。
本作の日本公開に先立ち、8月30日(火)、主演のウォンビン、キム・セロン、イ・ジョンボム監督が来日記者会見を行った。絶大な人気を誇るウォンビンと、『冬の小鳥』の演技が絶賛され、天才子役として注目されるキムの共演作ということもあり、多くの報道陣が会場のパークハイアット東京(東京都新宿区)に詰めかけた。

ウォンビン

タイトルの“アジョシ”とは、韓国語で“おじさん”という意味。ウォンビン演じるテシクは、隣家に住む少女ソミ(キム)から“おじさん”と呼ばれ、慕われている。この“アジョシ”、実は「腹が出ているような冴えないおじさん」(イ監督)という意味で使われているとのこと。さしものウォンビンも「“アジョシ”とは呼ばれたくないなあ」と苦笑い。しかし、イ監督は「ウォンビンの素晴らしい演技のおかげで、“アジョシ”という言葉が前向きに捉えられるようになった」と“アジョシ”の従来の意味合いを覆したウォンビンの演技を絶賛した。

イ・ジョンボム監督

また、イ監督は「(ウォンビンが兵役の終わった後に出演した)『母なる証明』を観ました。彼が男として成長した姿を目の当たりにし、今までの彼の作品とは違うイメージを見出しました。彼がさらに変身できる可能性を感じたんです。彼ならば『アジョシ』のテシク役を演じられると確信し、出演をオファーしました」と、ウォンビン起用の理由を明かした。
これに対し、出演を決めるに際して、まず脚本を読んだというウォンビンは「“アジョシ”というタイトルに惹かれた」と語るとともに、「多くの人がアクションの部分に関心を寄せると思うのですが、私はテシクの抱える心の痛み、少女ソミとの心の触れ合いなど、テシクの内面が脚本に上手く表現されている印象を受けました。また、テシクが見せる愛にも魅力を感じました」と出演の動機を打ち明けた。

キム・セロン

「この映画は男性的であり、暴力シーンも多くあるが、説得力を持って暴力を描きたいと考えました。少女への愛情やテシクとソミの心が通い合う姿を描くことができれば、観客から(暴力シーンについて)理解されると思っていました。ウォンビンには男らしさと、優しさの両面性の魅力があります。またキム・セロンはまだ若いが、素晴らしい女優です。2人の長所が合わさって、とても良い作品になりました」とイ監督は、2人の実力派俳優のコラボレーションに満足気。ウォンビンも「感受性が豊かで、真心を伝えられる目を持ち、思慮深い女優」とキムをベタ褒め。キムはウォンビンとの共演について、共演前は「(ウォンビンを)知らなかった」ものの、「撮影現場で実際に会ってみて、とても優しい人でした。(ウォンビンは)寒い時にはブランケット、私がお腹が空いた時には食べ物を持ってきてくれました」とウォンビンの心遣いを感じさせるエピソードを披露した。そんな彼女に対して、将来はどんな女優になりたいか?という質問が飛んだが、「深みのある女優になりたいと思います。きれいな顔を観せるような女優ではなく、観てくれる人がこれは本物の演技だと実感できるような演技をしたい。必要であれば、自分を捨ててでも演じたい」と答え、11歳とは思えない大物感を漂わせた。

ウォンビンとキムのツーショット

アクションシーンの多い本作。さぞかしトレーニングや撮影はハードだったかと思うのだが、ウォンビンは「今まで自分が経験したことがないジャンルだったので、苦労というよりは楽しみながら撮影やトレーニングに臨んでいました」と、新たなチャレンジを楽しんでいたよう。また、「この映画を通して愛の深さについて考えるようになりました。愛とは何か?を理解したような気がします。愛は男女のものだけではなく、大人と少女の愛もありうるもので、寄り添うように助け合う愛があるということを知りました」と、アクションそのものよりも、自身の考える“愛”についての見解を強調した。

ウォンビンやイ監督の口からは、本作に関して“愛”という言葉が頻繁に聞かれた。本作は単なるアクション映画の枠を超えて、ウォンビンが演じた繊細な心の描写、とりわけ、その心底にある“愛”の表現についても注目したいところだ。

『アジョシ』は9月17日(土)より全国ロードショー。

文:富田優子/写真:鈴木こより


▼『アジョシ』作品情報▼
監督・脚本:イ・ジョンボム(『熱血男児』)
出演:ウォンビン(「秋の童話 オータム・イン・マイ・ハート」『ブラザーフッド』『母なる証明』)、キム・セロン(『冬の小鳥』)、キム・ヒウォン(『亀、走る』『ミス・ギャングスター』)、ソン・ヨンチャン(『グッド・バッド・ウィアード』『渇き』)、キム・テフン(『女は男の未来だ』『パラレルライフ』)、タナヨン・グウォングトラクル(『闇の子供たち』)
2010年8月4日韓国公開/119分/R15+
© CJ ENTERTAINMENT INC & UNITED PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:http://www.ajussi2011.jp/
配給:東映


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