「シャンハイ」アジアの3大スターに酔う

日米中の実力派俳優をキャストに迎え、日本や欧米列強が割拠した魔都・上海を舞台に太平洋戦争開戦の裏側までをも描く。非常に壮大な試みをもった作品だ。

1941年、太平洋戦争開戦前夜の上海。米国諜報員ポール(ジョン・キューザック)は、この街に到着してほどなく、親友でもある同僚コナーの死に直面する。日本租界で見つかったコナーの他殺体。彼には日本人の愛人スミコ(菊池凛子)がいたが、姿を消していた。そして、コナーが犯罪組織である上海三合会のボスで日本人から裏の仕事を請け負っているアンソニー(チョウ・ユンファ)とその妻アンナ(コン・リー)、さらに日本軍情報部のタナカ(渡辺謙)の周辺を捜査していたことを知る。コナーがつかんだ秘密は何だったのか。なぜ殺されたのか。捜査を進めるうちにポールは、夫に隠れて反日レジスタンスとして活動しているアンナにひかれていく。

大きな歴史の流れを検証し、物語に忠実に落とし込もうとした努力が随所に見受けられる。しかし、軸であっただろうはずの、上海で暗躍する人々の愛のドラマの線が細くなってしまった感は否めない。太平洋戦争に突き進もうかという時期の緊迫した諜報戦に、登場人物の愛の駆け引きをからめてスリリングさの相乗効果を狙ったようだが、残念ながら打ち消しあってしまった印象だ。

最大の見どころは、やはり俳優陣それぞれの個性が活かされた競演か。渡辺謙の人間味ある憎まれ役は魅力的だし、なんといっても、中国の2大スター、コン・リーとチョウ・ユンファのキャラクターが、まるでアテ書きされたかのようにはまっている。(アヘン患者役の菊池凛子はやや損な役回りだったが…)コン・リーのグラマラスなチャイナドレス姿は、彼女が20~30代で出演した『紅夢』(91)や『上海ルージュ』(95)のそれに一層磨きがかかってスクリーンを華やかにするし、チョウ・ユンファがトレンチコート姿で銃を手にするシーンなんて、『男たちの挽歌』シリーズを観てきたファンにとっては嬉しくて笑いが止まらない。

Text by:新田理恵

オススメ度:★★★☆☆

8月20日(土)、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー


【原題】「SHANGHAI」
【監督】ミカエル・ハフストローム
【出演】ジョン・キューザック、コン・リー、チョウ・ユンファ、渡辺謙、菊池凛子ほか
アメリカ映画/105分

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公式HP http://shanghai.gaga.ne.jp/

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