「もう癒しのときではない」/久石譲3.11チャリティーコンサート THE BEST OF CINEMA MUSIC

 2011年6月9日、東京国際フォーラムで「久石譲3.11チャリティーコンサート THE BEST OF CINEMA MUSIC~ザ ベスト オブ シネマ ミュージック~≪映像つき≫」の東京公演が開催されました。あるコーラスグループに属している私は、幸運にもこの演奏会の特別編成合唱団の一員として参加することができました。

 とにかく、このたびは急なお話でした。私のコーラスグループはもともと2008年に行われた「久石譲in武道館」の公募コーラス隊をきっかけに結成された合唱団なのですが、さまざまな経緯の中でお話が来て、メンバーに知らされたのが4月下旬、楽譜を手にしたのが5月上旬、初回の練習が5月中旬。必死で練習する中で、あっという間に本番…。正直、苦労もありましたが、演奏後の万雷の拍手を聞いた時、このステージに立ててとても光栄だと心から思いました。会場の拍手は、単に演奏に対するものと言うより、久石さんの思いや姿勢に共鳴の意を表すものだと思えたからです。

 久石さんは、コンサートの開演にあたり、これまでさまざまなチャリティー企画が行われてきたが、「チャリティー」と言う言葉が免罪符のように扱われていることを危惧し、「もう癒しを語っているときではないのではないか」と聴衆に語りかけました。さらに、久石さんは映画『もののけ姫』の中のセリフ「ともに生きよう」と言う言葉を紹介しています。お互いの痛みを分かち合いながら、それぞれの場所で行動するということ…。印象的な言葉だと思います。

 今回のコンサートは、久石さんの手掛けた映画音楽と、実際の映画の映像を組み合わせて見せるという企画。ジブリ作品、北野武作品のほか、最近の映画で言えば『おくりびと』『悪人』の映像が場内スクリーンに映し出されます。この方法について、久石さんは「映像と音楽、どちらかがどちらの伴奏ではなく」と言うのですが、私自身、この言葉にハッとさせられました。映画を見る機会が多い中で、なんとなく音楽は映像の添え物であり、シーンを盛り上げるものという感覚が私の中にはあったからです…。実際、こういった「融合」の形でコンサートが行われることは少ないように思います。権利の問題など様々あるのかもしれませんが、もともとそのために作られたものであるなら、そうあることがむしろ自然であると感じました。

 自然と人間、音楽と映像が、独立したものでありながら共存するように、このたびの地震を経て、被災地と非被災地、被災者と支援者、加害者と被害者と言うような構図ではなく、どちらかがどちらかに依存したり、闇雲に反発し合うのではなくて、それぞれの立場で役割を果たしていかなければならないのではないか。コンサートを通して、私はそんなふうに思いました。

 この演奏会の収益は、楽器を失ってしまった被災地の子どもたちへの楽器購入支援金として贈られます。もしかしたら、どこかに募金箱を置いて財布の中からお金を出してもらう方が簡単なのかもしれません。けれど、その人でなければできないこともあるのではないか…? そんなことを思い、演奏に参加できた合唱メンバーの立場と、「映画と。」メンバーとしての立場で、私にできることをしようと、拙文ですが書かせていただきました。

 6/18には大阪で同公演が行われます。コンサートの成功を心よりお祈りしています。

  2011.6.12 
                                        外山香織

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