『BECK』 音楽映画への挑戦

原作の「BECK」は、音楽漫画は当たらないというジンクスを破った伝説的な作品だ。
音が出ない漫画で、それをどう表現するのか?
それは根源的な問題であり、漫画家・ハロルド作石にとっても大きな挑戦であったようだ。
しかし、多彩な描写でもって読者に「音をイメージさせる」ことに成功している。ハロルド作石の表現力の豊かさが、改めて証明された作品ともいえるだろう。

一方、音楽映画はどうか?
やはり、役者にとって相当の勇気を必要とするようだ。
昔は吹替えが一般的であったようだが、最近の役者は「声も体の一部」ということで自身の声で挑戦する人が増えてるのだとか。
本作では、BECKという名のバンドに二人のボーカルが存在する。メインボーカルの千葉はカリスマ的な存在感で、バラード担当のコユキは天賦の才ともいえるその声で観客を魅了する。
千葉を演じた桐谷健太は吹替えなしのパワフルなボーカルと圧倒的なパフォーマンスで、千葉のイメージにドンピシャ!というか、なんというか原作を超えてます。スゴい役者さんというのは、こちらの想像を超えてくるんですね。眉の動きから一挙手一投足にいたるまで、完璧な役作りでなりきってます。もう今後も、桐谷健太という俳優から目が離せません。なぜって、黒目の光が他の役者と違うんですもの。
佐藤健はというと…、天賦の声を与えられたコユキをどう表現するのか。これは最大の見せ場であり、否応なく期待が高まるところでもあります。
が、これがまた想像を超えてきます。しかし、それは彼自身の演技そのものというより、編集・演出方法にですね。う~ん、こういう表現方法があったのかぁ。と、さすがは堤監督の手腕に唸らされてしまう。
ただ、これは音楽映画において、禁じ手ギリギリの表現方法なのでは?という気も。効果絶大ゆえ、許されるのは一度きり!だと思います。
声の表現方法。そのバリエーションは音楽映画にとっても、永遠に追及するべく課題なのかもしれません。
おススメ度:★★★★☆
Text by 鈴木こより

【監督】堤幸彦
【原作】ハロルド作石
【キャスト】水島ヒロ/佐藤健/桐谷健太/中村蒼/向井理/もたいまさこ(一瞬☆)
日本/2010年/144分
『BECK』公式サイト http://www.beck-movie.jp/

トラックバック-1件

  1. Tweets that mention 『BECK』 音楽映画への挑戦 : 映画と。 -- Topsy.com

    […] This post was mentioned on Twitter by 新田理恵 and 富田優子, 映画と。. 映画と。 said: 『BECK』 音楽映画への挑戦 http://is.gd/f05sw […]

トラックバック URL(管理者の承認後に表示します)