【カンヌ国際映画祭】最高賞は『ツリー・オブ・ライフ』、栄冠はベテラン・中堅の手に分散

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5月11日から22日の日程で開催された第64回カンヌ国際映画祭。今年は、テレンス・マリック監督作『ツリー・オブ・ライフ』(日本公開8月12日)にパルム・ドール(最高賞)を授与して閉幕した。
『ツリー・オブ・ライフ』は、テキサスに暮らす一家の40年にわたる物語を壮大なスケールで描いた作品で、開催前から本命視されていた話題作だ。ブラッド・ピットが厳格な父親を演じる。大変な寡作で有名なマリック監督は、1979年に『天国の日々』で監督賞を受賞して以来、32年ぶりのカンヌ出品にして、2度目の栄冠となる。

Kirsten Dunst - Best performance by an actress - Melancholia © AFP

最優秀男優賞は、映画祭直前に招待作品から急きょコンペ入りを果たした『The Artist』(原題)の仏俳優ジャン・デュジャルダンが受賞。ハリウッドの無声映画スターの人生を描いた同作は、ジャーナリストらの間でも大変人気が高く、今年最高の発見だったと言える。最優秀女優賞は、『Melancholia』(原題)のキルスティン・ダンストの手に。ナチ擁護発言でラース・フォン・トリアー監督は追放処分となったものの、同監督独特のメランコリック、かつ“終末”感を極限まで高めた映画のスケールは見事。問題発言がなければ、ひょっとするとパルム・ドールの行方は変わっていたかも……と、今となっては意味のない想像を膨らませずにはいられない。
映画祭後半で高い評価を得ていた作品に、さすがの完成度を見せたアキ・カウリスマキ監督の『Le havre』(原題)、落ち目のロック・スターをショーン・ペンがやり過ぎなくらい作り込んで演じたパオロ・ソレンティーノ監督作『This must be the place』(原題)、プレス受けが抜群によかったラデュ・ミヘイレアニュ監督(『オーケストラ!』)の『Le source des femmes』(原題)などがあるが、いずれも無冠に終わった。

2011 Awards - Closing ceremony © AFP

カンヌ常連監督がしのぎを削った今年のカンヌ。蓋を開けてみると、パルム・ドールとグランプリはベテランの巨匠の手に、監督賞、脚本賞、審査員賞は今後が楽しみな中堅どころに贈られた印象。ただ、イスラエルのジョセフ・シダー監督の受賞については、トリアー監督の発言を受けての「政治的配慮か?」という推測も呼んだ。非常に“バランスの良い”選考結果の真意は、審査員団の胸の中にしまわれている。

主な受賞結果は以下のとおり

▼グランプリ▼
『少年と自転車』(仮題)ジャン=ビエール&リュック・ダルデンヌ監督
『Once upon a time in Anatolia』(英題)ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督

▼監督賞▼
ニコラス・ウィンディング・レフン 『Drive』(原題)

▼脚本賞▼
ジョセフ・シダー 『Footnote』(英題)

▼審査員賞▼
『Polisse』(原題) マイウェン監督

Text by:新田理恵

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