『LIVE HOUSE』DVD発売記念: 米国人監督インタビュー「ライブハウスは日本独特のカルチャーだ」
『LIVE HOUSE』は、都内のライブハウスで演奏しているインディーズバンドのライブシーンとインタビューが収録された音楽ドキュメンタリーだ。東京在住10年の米国人ジャーナリスト、ケヴィン・マクギュー氏がライブハウスの取材を通して、そこから生み出される日本独特のサブカルチャーに迫る。商業的なバンドに占領されることなく、誰にでもチャンスが与えられるライブハウス。そこから現れたインディーズバンドの中には、今や世界中からファンを獲得し、海外ツアーやビッグフェスにも招待されているバンドもある。ライブハウス=日本独特の音楽シーンがいま熱い。DVD発売にあたって、ケヴィン・マクギュー監督に話をうかがった。
—Q.なぜ、ライブハウスを取材しようと思ったのですか
ライブハウスは本当に日本の独特のものですね。アメリカでもバンドを呼ぶバーはありますが、お酒がメインで音楽を無視している人もいます。日本では音楽を聴くためにライブハウスに行きますよね。「海外では飲むために音楽を聴く、日本では音楽を聴くために飲む」といった感じです。海外も日本もホールやスタジアムライブもありますが、それもライブハウスとは違うと思います。ライブハウスではパフォーマンスが終わると、バンドメンバーとお客さんが打ち上げをしたりします。Fuji RockやSummer Sonicではできない経験です。演奏するアーティストとお客さんの間に壁がないところを撮りたいと思いました。
またライブハウスは「日本の中の外国」だと思います。たとえば、山手線で隣の人に声をかけることはないですね。ライブハウスでは隣で音楽を楽しんでいる人がいたら、「一緒に飲まない?」と声をかけることが多いです。職場では未だ男女差があるようですが、ライブハウスでは女の子のバンドの方がパワーがあります。その日本のサブカルチャーを調べたいと思いました。
—Q.出演バンドはどのように決めたのですか
日本にはライブハウスが1,000以上あり、1つのライブハウスでだいたい5組のバンドが出演するので毎日約5,000組のライブがあります。その中から取材するバンドを選ぶのは大変でした。選ぶ基準は音楽やライブの良さだけじゃなく、たとえばホラー映画から影響を受けているという<Ed Woods>など、そのインスピレーションやインタビューが面白いと感じたバンドを選びました。
—Q.海外でのライブも収録されていますが、どこで取材されたのですか?
ほとんどが東京の下北沢や三軒茶屋周辺ですが、名古屋や大阪でも撮りました。また、サンフランシスコで行われた「日本漫画・アニメ映画祭」のライブ映像や、<Bo-Peep>が毎年行っているイギリスツアーにも同行取材しました。彼らのライブを聴くために、YouTubeなどインターネットを通して知り合ったファンがイギリス郊外のバーに集まってきたのは驚きでしたね。言葉の壁はないのだと感じました。
—Q.監督メッセージ
日本には興味深いサブカルチャーがたくさんあります。それを撮る監督がもっと増えたらいいと思います。
※本作は2010年、渋谷アップリンク・ファクトリーで上映され、ジャパンファウンデーションの協力により北京でも上映された。
▼作品レビュー
なぜ、ライブハウスで演奏するのか?
九州や大阪など全国から集まったバンドだけでなく、今やイギリスやデンマークなど欧州のバンドも日本のライブハウスに魅了され、そこで演奏している。彼らが語る日本のライブハウスの魅力とは?欧州のライブハウスとの違いも興味深い。
現在はYouTubeなどで世界中の音楽を聴くことができるが、日本のインディーズバンドが国境を越えて人を熱くさせることも可能だ。このドキュメンタリーは、それを証明している。「退屈な毎日を送っている人は、とりあえずライブハウスに行くといい。そこにはきっと何かがあるから」というコメントに胸が熱くなった。
90分/2009/日米
▼出演BANDS
Bo-Peep/Red Bacteria Vacuum/Crispy Nuts/Moja/mind of asian/Ed Woods/Majo/Howling Guitar/人間★中毒
▼出演
Aggressive Dogs/Mike Watt/Hiroko Matsushita
★DVD購入はこちらから:
http://www.live-house-movie.com/dvd-jp.html
▼ケヴィン・マクギュー監督 プロフィール
1974年、アメリカミズーリー州生まれ。
チェコ共和国、ハンガリー、ポーランド滞在後、2000年より東京を拠点にジャーナリスト・フィルムメーカーとして活動中。東京での約10年間はファッション・アート・デザイン・映画・音楽・マーケティングといった様々なトピックを題材に、日本だけでなく、アメリカ、 イギリス、イタリア、ドイツ、香港などの新聞・雑誌に記事を掲載。
2003年、東京とベルリンの両都市で撮影された短編映画「The Blue Dream」を監督。本作は両都市で上映された。「Live House」は国際交流基金によって制作された。
取材・文 鈴木こより