【FILMeX】第25回東京フィルメックス授賞式
11月30日、丸の内TOEIスクリーン1で第25回東京フィルメックスの授賞式が行われ、コンペティション部門の各賞及びその他の賞が発表された。最優秀作品賞は『四月』が受賞したほか、『サントーシュ』は審査員特別賞と学生審査員賞の二冠受賞。スペシャル・メンションには『白衣蒼狗』が、観客賞には審査員を務めるロウ・イエ監督『未完成の映画』が選ばれた。審査員の作品が観客賞を受賞するというのは、かなり珍しいこともあり、ロウ・イエ監督は少し照れた表情を見せていた。
今回のコンペティション審査員は、ロウ・イエ(LOUYe/中国/映画監督)、カトリーヌ・デュサール(CatherineDUSSART/フランス/映画プロデューサー)、ラ・フランシス・ホイ(LaFrancesHUI/アメリカ/キュレーター)だった。
最優秀作品賞 (副賞 賞金70万円)
『四月』
監督:デア・クルムベガスヴィリ(フランス、イタリア、ジョージア/2024/134分 )
【授賞理由】この大胆で冷徹な長編映画は、保守的な農村地帯で女性が直面する厳しい現実を突きつけ ている。彼女たちの自由は、それが身体に関わるものであろうと欲望の表現に関わるものであろうと、 絶え間ない闘いである。監督は、骨太なリアリズムとシュールレアリズム的なホラーを融合させ、吸い込まれるような挑発的な体験を生み出している。緻密で丹念に作り込まれた撮影は、観客の視線を捉え、私たちの視点や関わりを積極的に考えさせる。この作品は、形式的な勝利であるとともに計り知れ ない関連性と共鳴性をもつ作品です。
デア・クルムベガスヴィリ監督からビデオメッセージが流された。
「この受賞は、私にとっても、スタッフ全員にとっても大きな意味があります。この映画は制作に参加した全員の努力と献身の結晶だからです。 映画を作ることは決して簡単なことではないし、容易な道のりではありませんでしたが、特にこの映画に関しては多くの制約があり、ジョージアでこの映画の制作を手伝ってくれた人々は非常に勇敢でした。この受賞は私にとって大切です。この映画に寄与してくれて、この映画の存在を可能にしてくれた全ての人と分かち合えるからです。本当に感謝しています。そしてまた来年会えるかな」と、会場に集まった観客と審査員たちへ喜びを伝えた。
審査員特別賞(副賞 賞金30万円)
『サントーシュ』
監督:サルンディヤ・スリ(インド、イギリス、ドイツ、フランス/2024/120分 )
【授賞理由】容赦ないストーリー展開のダークスリラーで見事に演じられた女性キャラクターを通じ て、社会の硬直性と不平等を痛烈に描き出している。舞台は現在のインドではあるが、世界中に蔓延し ている妥協と呼応している
サルンディヤ・スリは既に帰国していたため、ビデオメッセージが流された。
「本作で日本に帰ってくることができたのは、私にとってとても意義深いことでした。インドに関する多くの問題について語るのと同時に、サントーシュにとって非常に個人的な、そして非常に普遍的な映画を作りたかったのです。そして、東京でこのような素晴らしい上映会が開催され、素晴らしい観客がたくさんの興味深い質問を熱心にしてくれたことは、本当に素晴らしい経験でした」
スペシャル・メンション
『白衣蒼狗』
監督:チャン・ウェイリャン共同監督:イン・ヨウチャオ(台湾、シンガポール、フランス/2024/128分)
【授賞理由】 この映画は、その説得力のある映画言語によって、闇、汚辱、残酷な現実を力強く描き出 し、人間の本性の深さに立ち向かう勇気を示している
チャン・ウェイリャン監督、イン・ヨウチャオ共同監督が登壇した。
イン・ヨウチャオ共同監督が「私たちのことをこのように温かく受け入れてくださって感謝を申し上げます。」と述べると、チャン・ウェイリャン監督も「撮るのが容易な映画ではなかったですが、キャスト、クルーメンバーを代表してお礼を申し上げます。容易ではないこの映画に付き合ってくださったお客さん、ずっと見てくださった方、その時間にも感謝したいです」と述べ、2人で何度も感謝の気持ちを伝えていた。
学生審査員賞
『サントーシュ』
監督:サンディヤ・スリ(インド、イギリス、ドイツ、フランス/2024/120分)
【授賞理由】サスペンスフルなドラマの面白さとそこから浮かび上がる社会構造の描き方に驚かされました。人物の魅力を引き出すカメラワークからは、映画の持つ繊細で挑戦的な力強さを感じました。 終盤、通り過ぎる電車越しでコマ送りのようになるふたりのショットが、息を飲むほど素晴らしかった
サンディヤ・スリ監督からのビデオメッセージ
「この賞を受け取ることは、私にとても大きな意味があります。26年前、私は1年間英語の教師をしていました。そのときに、たまたま山形ドキュメンタリー映画祭で観た映画にインナスパイアされてすぐにカメラを買い映画を撮り、その作品で映画学校に応募し合格しました。その日本に戻ってきてこのような賞をいただいて、とても光栄です」と、日本での”映画”との偶然の出会いで今があると、サンディヤ・スリ監督は日本語と英語でその特別な思いを語った。
観客賞
『未完成の映画』
監督:ロウ・イエ(シンガポール、ドイツ/2024/107分)
ロウ・イエと脚本・プロデューサーを務めたマー・インリー、共同プロデューサーのアレックス・ローが共に登壇。マー・インリーは「 観客賞という賞は、ロウ・イエ監督にとっては”初めての賞”なので、本当に皆さんに心から有難うと申し上げます」と挨拶し、ロウ・イエ監督が照れる場面に、会場から笑い声があがった。つづいて共同プロデューサーのアレックス・ローは東京でずっと生活をしているとのことで日本語で観客への感謝の気持ちを伝えた。
講 評
最後に国際審査員を代表して、今年の映画祭をロウ・イエが講評した。
「今回はこのお2方と一緒に審査を担当させていただき本当に光栄でした。我々3人は、作品1本1本につき自分の意見を十分に述べて討論し審査を進めていきました。その中でそれぞれが自分の1番好きな作品を選んでいきました。それはとても楽しい時間でした。そして作品を届けてくれた監督の皆さんに心から感謝したいと思います。監督たちの視線でもって、世界を色々と見ることができました。我々の世界を見る目を広げてくれたことに感謝します」その言葉を受け、場内からも惜しみない拍手が送られ、授賞式は終了した。
タレンツ・トーキョー2024
東京都、アーツカウンシル東京、タレンツ・トーキョー実行委員会の共催、およびベルリン国際映画祭との提携、ゲーテ・インスティトゥート東京の協力によるこの事業として11月25日から12月1日の7日間にわたり、アジアから17名の映画の未来を担う人材が参加。11/28(木)に実施された「公開プレゼンテーション」の審査を経て見事「タレンツ・トーキョー・アワード」に選ばれたのは、マイ・フエン・チー『The Rivers Know Our Names』。また、今年は、ハグヴドラム・プレヴオチル「The Vision of Lonely Mountains」、畠山佳奈(はたけやま かな)『Dollyamory』、ヤン・ハオハオ「Naked in Glendale」の3企画にスペシャルメンションが与えられた。
タレンツ・トーキョー・アワード2024(副賞 賞金30万円)
「The Rivers Know Our Names 」
(マイ・フエン・チー(MAI Huy?n Chi )/ベトナム)
【授賞理由】急速に発展している国の中で、社会から疎外されたコミュニティをつぶさに観察したプロジェクトにタレンツ・トーキョー賞を授与できることを審査員一同光栄に思います。この作品は、特に若い女性と年老いた女性の2人に焦点を当て、力強いイメージを通して丁寧に人物を描写し、コミュニティにおける個人の強さと癒しの可能性を描き出しています。タレンツ・トーキョー・アワードをマイ・フエン・チー監督の「The River Knows Our Names」に贈ります。
マイ・フエン・チー監督
「小さな親切な行為を他の方に与えられればと思っています。私は映画を通してそれをやろうとしています。私自身もこの期間中にたくさん受け取ることができました。このような機会を設けていいただいたことに感謝しています」
「第25回東京フィルメックス」開催概要
名称:第25回 東京フィルメックス / TOKYO FILMeX 2024
会期:11月23日(土)~12月1日(日)
会場:丸の内TOEI、ヒューマントラストシネマ有楽町
上映プログラム:東京フィルメックス・コンペティション、特別招待作品、メイド・イン・ジャパン、プレイベント
公式HP:https://filmex.jp/