【TIFF】わが友アンドレ (コンペティション)
父親の葬儀に向かう主人公リー・モーが、飛行機の中で、中学卒業以来会っていなかった友人アンドレを発見する。人違いだと言い張られ、一瞬は引っ込んだリーだったが、よくよく話を聞いてみると、リーの父親の葬儀に行くところだという。自分がそのリーだと言っても、お前はリー・モーではないと言い張るアンドレ。からかわれているのかそれとも…。とりあえず自分はリーの友達だということにして、2人は一緒に葬儀に向かう。
大雪のため、飛行機は目的地に着かず、2人は車をレンタルして故郷へと向かう。いつ着くともしれない長い旅の途中、2人で会話をするうちに、いつしかリー・モーは現実とも夢ともつかない不思議な体験をする。子供のころの記憶が次々と蘇ってくる。2人の楽しい思い出もあれば、夫婦喧嘩ばかりしていて出て行ってしまった母親のこと、学校で受けた先生からの理不尽な行為、辛い思い出もたくさん蘇ってくる。
なぜリーは少年時代の想い出がボンヤリしているのか。それは、子供時代に起きたショックな出来事のために、大切な思い出までが頭の奥に封印されていたからなのだ。なんとなく、父親の葬儀を億劫に感じていたリーは、彼のしてくれたこと、その優しさを思い出した時に、初めて本当の自分に戻れたのだ。少年時代の記憶が失せるほどの辛い思い出も、いつかは取り出して見つめ直す必要がある。これから自分の子供を育てていく彼にとって、それが今だったのだろう。アンドレが「お前はリー・モーじゃない」と言ったことの真意がわかった時に、観客は落涙必至である。これは単なる葬儀への旅ではなく、旅自体がすでに本当の意味での弔いだったのだから。
(★★★★☆)
第37回東京国際映画祭
会期:令和6年10月28日(月)~11月6日(水)
会場:シネスイッチ銀座、丸ノ内TOEI(中央区)、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ 日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、有楽町よみうりホール、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場、LEXUS MEETS…、東京宝塚劇場(千代田区)ほか、都内の各劇場及び施設・ホールを使用
公式サイト: https://2024.tiff-jp.net/ja/