【TIFF】テルアビブ・ベイルート(コンペティション)

映画と。ライターによる短評です。

【作品紹介】

1980年代のイスラエル、レバノン間の紛争を背景に、国境によって家族と分断されたふたりの女性の旅を描いたロードムービー。監督は『故郷よ』(11)で知られるイスラエル出身の女性監督ミハル・ボガニム。

【レビュー】

藤澤貞彦/歴史に翻弄された度:★★★★☆

「これまでの人生で平和だったことなんて一度もないわ。結婚式の時にも戦争はすぐ身近にあった」冒頭の会話がレバノン、イスラエルこの地域の現状のすべてを語っていた。世界にはこんな国があちらこちらにあるのである。川を挟んで敵同士の家族が水浴びをするという印象的なシーンがある。その真ん中で子供たちが仲良くなってしまう。彼らには宗教も政治も関係がないのである。85年から始まるこのドラマは、戦争によって引き裂かれたイスラエルとレバノン2つの家族を通して、この地域の歴史が語られていく。ひとつはレバノンに住むマロン派キリスト教徒。もうひとつの家族はイスラエルのユダヤ教徒である。80年代のイスラエルによるレバノン侵攻は、マロン派の組織レバノン軍団とドゥルーズ派のムスリム、イスラエルが手を組みシリア駐留軍やヒズボラを追い出そうとする一方、親シリアのシーア派イスラーム評議会アマルがそれに対立するなど複雑な様相を呈していた。戦争の原因が宗教の問題ではないことは明白である。金網を挟んですぐそこに別れた家族がいるのに、触れることができない、国境を通れるのは遺体のみという皮肉。歴史に翻弄された二つの家族。失ったものはあまりにも大きい。


© 2021 MOBY DICK FILMS – LES FILMS DE LA CROISADE – TWENTY TWENTY VISION Filmproduktion – TEL AVIV BEIRUT AVC LTD – LA VOIE LACTÉE


第35回東京国際映画祭
会期:令和4年10月24日(月)~11月2日(水)
会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区(TOHOシネマズシャンテ、ヒューマントラストシネマ有楽町他)
公式サイト:https://2022.tiff-jp.net/ja/

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