【FILMeX】ノー・ベアーズ(英題)(特別招待作品)

映画と。ライターによる短評です。

作品紹介

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映画監督ジャファル・パナヒの目を通して並行して語られる2つの愛と抵抗の物語。ここ十数年、芸術的自由に関する自己言及的作品を作り続けてきたパナヒの最新作。パナヒがイラン当局に拘束される中、ヴェネチア映画祭でプレミア上映され、特別審査員賞を受賞した。

クロスレビュー

藤澤貞彦/災難と熊は忘れたころにやってくる度:★★★★★

『人生タクシー』『ある女優の不在』前2作同様、パナヒ監督自身が出演し、まるでドキュメンタリーのようなタッチで進んでいく映画である。今回はトルコとの国境の町に監督は泊まり込み、トルコでの映画撮影の指示をネット通信で与えていくという設定になっている。両方が同時進行で進んでいくのだが、それぞれに大きな問題が起きていく。トルコで撮影されている劇中劇も、ドキュメンタリーと劇映画がミックスされたような作りで、いかにもパナヒ監督作品というタッチになっているのが面白い。自分たち自身を演じる俳優がいて、それを遠隔操作のように演出する監督がいて、それをさらに演出するパナヒ監督自身がいるという、三重の構造になっているのに、大変わかりやすい。タイトルのノー・ベアーズとは「クマが出るからそこに行ってはいけない」と脅されているが実は何も出ないという意味なのだが、監督自身は、この作品の撮影後、そこ(テヘランの検察庁)に行って逮捕され禁固刑がくだされ収監されてしまった。皮肉にもクマが出てしまったのである。そんな運命を予感するかのように、この作品は映画の撮影現場でも、監督の泊まる村でも、彼自身が原因で悲劇が起こり八方ふさがりになってしまう。前2作にあったような軽さはそこになく、むしろ重苦しく、彼自身が置かれている深刻さがジワジワと伝わってきた。


▼第23回東京フィルメックス▼

期間:2022年10月29日(土)〜11月6日(日)
【会場】有楽町朝日ホール(有楽町マリオン)
主催:認定NPO法人東京フィルメックス
共催:朝日新聞社/台北駐日経済文化代表処台湾文化センター/東京国際映画祭(UNIJAPAN)
公式サイト:https://filmex.jp/

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