【TIFF】輝かしき灰(コンペティション)

映画と。ライターによる短評です。

【作品紹介】


ベトナムを代表する作家グエン・ゴック・トゥの小説を映画化。ベトナム南部の海沿いの村を舞台に3人のヒロインとそれぞれの男性との関係を描く。監督は『漂うがごとく』(09)のブイ・タック・チュエン。

【レビュー】

藤澤貞彦/東アジア的女の情念度:★★★★☆

夫が執着する女の家が燃えたことで、彼の気持ちも一緒に灰になるといい。そんな妻の気持ちがタイトルとなっている。この映画は叶わぬ愛を求める三人の女の情念。子供ができたからと仕方なく結婚させられ、妻に情がわかない夫を振り向かせようとするタイトルロールの女。娘を水難事故で亡くし、それ以来精神が崩壊し自分の家を放火する夫のため、燃やされても、燃やされても家を作り続ける女。十二歳のころに強姦され頭がおかしくなったが、あろうことかその後もその犯人を想い続け、刑期を終えて村に帰ってきたその男に石や蛇を投げ入れることで振り向かせたい女。この映画では、火、水、木、灰(土)、石(鉱物)が女たちの執念を表す道具となっている。これすなわち東洋思想でいうところの元素、五行である。刑期を終えて村に帰ってきた男が仏門に入り、その影響によって気の狂った女の執念が徐々に穏やかになっていく。執念の塊を象徴する蛇や石を投げていた女は、火事の際には必死に水をかけ、その後も木で家を再建する手伝いをする。原作の小説にはなかったこの3番目の女を加えたことで、五行思想をより際立たせることになったに違いない。女たちの情念とその後を五行と結び付けることで、画面に具体的な絵として見せたところがとても東アジア的で、ユニークな作品である。


第35回東京国際映画祭
会期:令和4年10月24日(月)~11月2日(水)
会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区(TOHOシネマズシャンテ、ヒューマントラストシネマ有楽町他)
公式サイト:https://2022.tiff-jp.net/ja/

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