【FILMeX】第22回東京フィルメックスが開幕
第22回東京フィルメックスの開会式が10月30日(土)、東京・有楽町朝日ホールにて行われた。ここ数年さまざまなことが毎年のように起こり、開催自体が危ぶまれるような事態に見舞われた東京フィルメックス。今年もプログラミング・ディレクターの突然の交代があり、かつ昨年につづきコロナ禍での開催ということではあったが、初日からほぼ満員の盛況の中で開幕した。今年からプログラミング・ディレクターに就任した神谷直希氏から、パンデミックでどうなるかわからない中で準備を進めてきて、スポンサーや関係者、支援者のお陰で初日を迎えられたと、喜びと感謝の気持ちが伝えられた。
つづいて国際審査委員長を務める諏訪敦彦監督を筆頭に、ウルリケ・クラウトハイム氏(ゲーテ・インスティテュート東京文化部)、オリヴィエ・デルプ氏(アンスティチュ・フランセ日本)、小田香監督が登壇。諏訪敦彦監督が「新しいプログラミング・ディレクターの下で集められた250本以上の作品の中から選ばれた10本の作品と会場で出会っていくことで、刺激的な1週間になることを望んでおります」と挨拶した。
セレモニーに続いて、オープニング作品『偶然と想像』(第71回ベルリン国際映画祭で審査員グランプリ(銀熊賞))上映前に、濱口竜介監督、出演者の古川琴音、玄理、渋川清彦、甲斐翔真、占部房子、河井青葉が舞台挨拶に立った。渋川清彦、占部房子らは昔から濱口監督と仕事をしてきた仲間で、現場でも濱ちゃんと呼んでいたことを披露、信頼関係の強さを伺わせた。
玄理は演じるにあたって工夫した点を尋ねられて「他の作品では、10分くらいの長回しのシーンがあったら、お客さんが退屈しないように、ここを引き立ててしゃべろうとか色々考えるのですが、琴音ちゃんからリアクションがあったらそれに対して返すということだけをしていました。むしろ何もしないようにしていたのが、一番気を付けていた点です」と述べ、また渋川清彦も役作りは「監督の書いたセリフを丁寧に理解することだった」と語った。また、玄理は「今回の作品では、映画のシーンに入る前の5分から10分弱の会話が台本には書かれていて、それをリハーサルでは行っており、自然にシーン入っていけた」という。このあたりのことが作品の登場人物たちの自然な雰囲気に繋がっていたのだろう。
過去に仕事をしたことがある占部房子からは、今回監督が変わった点として、「『PASSION』の時のように初対面同士でいきなり歌を歌わされるということはなかったのだが、出演者と監督で揃ってよく四股を踏んでいた」という風変わりなエピソードが披露された。それに対して河井青葉は「毎朝顔を合わせて四股から始めましょうかってなると、すっと入れるような感じがするので、これにも意味があるのかなって思ってやっていた」と言うのだが、濱口監督自身は、友人から「四股はいいよ。腰ができてくるんだよね」と勧められてやってみただけで、どのような意味があるのかは正直わからなかったのですと、今更ながらの告白をした。
濱口監督はこの作品について「短編集で1本の作品を作ろうと思ったきっかけは、自分が自由に仕事をできる場を持ちたかったということでした。大きい作品だと、スケジュールが詰まってきて、なかなかじっくり時間をかけることができないのですが、それができるプロジェクトということで、今回の短編集というのを考えてみました。この作品は、コメディですって言って笑いが起きなかったり、というのは避けたいのですけれども、でも一所懸命生きている人っていうのを見ていると、多少滑稽だったりするものなのですよね。『PASSION』という作品でも大爆笑が起きるシーンがあるのですが、演じていた岡本竜汰さんが、俺あんなに一所懸命やったのに何でこんなに笑われるんだって舞台袖で言っていたんですけれども、それは一所懸命やったからですよって答えました。本当に一所懸命にやっていただいて、それを皆さんに受けとめていただければと思っております」と語り、最後を締めた。
第22回東京フィルメックスは、11月7日まで開催される。今年はオープニングから完全に東京国際映画祭と重なってしまった東京フィルメックス。ファンの間では、同時だと見逃す作品が増えてしまうという声があるのも事実ではあるが、イザベル・ユペールと濱口竜介監督。カミラ・アンディニ監督と岨手由貴子監督。映画祭双方の交流という今までになかったイベントが組めるという利点があるのも確かである。今後東京フィルメックスが東京国際映画祭との関係性の中で、どういう立ち位置になっていくのか、新しいプログラミング・ディレクターを迎え、注目の1週間が始まる。
▼第22回東京フィルメックス▼
期間:2021年10月30日(土)〜11月7日(日)
【メイン会場】有楽町朝日ホール(有楽町マリオン)11/23(土)〜12/1(日)
【レイトショー会場】ヒューマントラストシネマ有楽町
主催:認定NPO法人東京フィルメックス
共催:朝日新聞社/東京国際映画祭
上映プログラム:東京フィルメックスコンペティション、特別招待作品、メイド・イン・ジャパン部門プレオンライン配信を合わせた「全27作品」
公式サイト:https://filmex.jp/