【TNLF】メディア

映画と。ライターによるクロスレビューです。

作品紹介

ギリシャ悲劇をベースに、夫に捨てられた王女メディアの復讐を描く。カール・Th・ドライヤーが切望した企画を彼の死後実現した、デンマーク映画史における重要な作品。トリアーが影響を受けたと公言している巨匠の脚本に新解釈を加え、王女の静かだが激しい怒りを、音と光、そして自然を用いて表現している。

クロスレビュー

鈴木こより/女を敵に回しちゃいけないよ度:★★★☆☆

女性を利用して全てを手に入れようとした男が、結局それに失敗して全てを失う話である。トリアー監督も女性でこじらせている印象があり、この題材に惹かれたのは頷ける(性的に物議を醸す作品が多いし、制作過程におけるセクハラ疑惑もあるし)。劇中で「女性を介さないで子どもが授かればどれだけ良いか」という女性の存在を否定するようなセリフもありドキッとさせられる。多くの作家によって手掛けられた「メディア」にはその数だけの解釈があるが、本作ラストシーンの演出は鮮やかだった。メディアは船上で頭に被せていた黒い布を外し、赤毛のロングヘアをなびかせる。妻でも母でもなくなったメディアが再び女になる、という意味に受け取れて、夫との対比が印象的だった。

藤澤貞彦/ラース・フォン・トリアー度:★★★★☆

元々がテレビ用であるためか、映像はどこかボーとして、昔のサイレント映画を観ているような錯覚に陥る。実際その効用が逆に活かされていて、スンダード画面、場面によってフィルターまで使い、まるでサイレント映画のような雰囲気に仕上げられている。その時代に行われていたように、全編光と影で映像表現がされている。イアソンの婚姻の日、布越しに、ろうそくで照らし出された新婚の妻の影を愛撫するシーンの美しさ。濃い霧が立ち込める中、コリントス王クレオンが、イアソンの妻メディアに国から出ていけと迫るシーン、霧から人が現れて消える場面の美しさ。水に写ったメディアの揺れる顔。カール・テオドア・ドライヤーの元の脚本自体のセリフが少なく抑えられていることもあって、この映画には最初からクラシック映画の風格さえ漂っている。ただこの復讐劇、メディアの苦悩の末の最後の行為が、その表現の仕方においては強烈にトリアーを感じさせるのであった。

【開催概要】

トーキョーノーザンライツフェスティバル 2020
会場:ユーロスペース、アップリンク渋谷
会期:2020 年2 月8 日(土)~2 月14 日(金)
チケット先行販売:2020年1月11日~24日 1300円均一
チケット一般販売:一般/1500円ほか 各上映3日前よりオンライン、窓口にて
公式 WEB サイト:http://tnlf.jp/
twitter @tnlfes
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