【TNLF】陰謀のデンマーク

映画と。ライターによるクロスレビューです。

作品紹介

©Henrik Ohsten

2025年、コペンハーゲン。爆破テロから1年後、移民排斥を訴える極右政党が台頭し、支持率を上げていた。移民や難民に対するヘイトクライムが悪化する中、19 歳のザカリアはそれに対抗する過激派組織に傾倒し、党首の暗殺を企てるが……イラク移民の両親を持つ監督が、激化するナショナリズムに警鐘を鳴らした政治サスペンス。

クロスレビュー

藤澤貞彦/今そこにある危機度:★★★★★

モーツァルトのレクイエムラクリモーサ(涙の日)から始まったこの作品は、再び同曲で幕を閉じる。すべての不幸な出来事がサークルの中で起こっているかのように。コペンハーゲンのテロ事件から要人の暗殺まで。2025年、これから起こりうる未来の物語ではあるが、とても生々しい。街では差別が蔓延り移民への迫害が繰り返されるが、政府や官僚は日和見主義で全く無力である。テロの不安から極右政党が遂に政権を取るところまでくる一方、移民たちは不安を募らせていく。極右組織とムスリムの組織の両方に潜入捜査が行われ、憎しみの連鎖が克明に刻まれる。その緊迫感。極右政党の党首の顔が、ネオナチのそれではなく、普通の家族の夫であり父であること、それがかえってリアルである。移民には寛容なイメージのある北欧でこのような作品ができたことに、ヨーロッパの深刻な状況を垣間見た思いもする。しかし、これは遠い国の物語ではない。ヘイトクライムをする日本人たち、政治家の顔を思い浮かべてみよう。どこにも同じような危機が存在するのである。

鈴木こより/一般公開希望度:★★★★★

ついにデンマークでも移民排斥を訴える政党が与党になるなんて!とショッキングな内容だったが、これは未来の話。社会から虐げられた移民の若者が、危機感から追い詰められて行動を起こす話である。「テロ=悪」という短絡的な報道ではなく、その裏にある真実を語らなければ、この物語はそう遠くない日に現実のものとなるだろう。裏切りや潜入捜査による緊張感もハンパないが、家族や仲間と過ごすかけがえのないシーンが心に残る、緩急の効いた作風も魅力。恐怖をあおるアイテムもインパクト大で小道具使いも秀逸だが、オカンのお弁当は世界共通の言語なんだな、とあらためて思う(涙)。

【開催概要】

トーキョーノーザンライツフェスティバル 2020
会場:ユーロスペース、アップリンク渋谷
会期:2020 年2 月8 日(土)~2 月14 日(金)
チケット先行販売:2020年1月11日~24日 1300円均一
チケット一般販売:一般/1500円ほか 各上映3日前よりオンライン、窓口にて
公式 WEB サイト:http://tnlf.jp/
twitter @tnlfes
Facebook @tnlfes

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