パラサイト 半地下の家族

映画と。ライターによるクロスレビューです。

【作品紹介】

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全員失業中、“半地下住宅”で暮らす貧しいキム一家。長男ギウは、“高台の豪邸”で暮らす裕福なパク氏の家へ家庭教師の面接を受けに行く。そして兄に続き、妹ギジョンも豪邸に足を踏み入れるが…。この相反する2つの家族の出会いは、次第に想像を遥かに超える物語へと加速していく――。カンヌ国際映画祭で審査員満場一致の[最高賞]パルムドールに輝いた本作。メガホンを取ったのは『殺人の追憶』『グエムル-漢江の怪物-』など、世界がその才能を絶賛する若き巨匠ポン・ジュノ。第92回アカデミー賞®国際長編映画賞韓国代表にも選出され、受賞が有力視されている。

【クロスレビュー】

外山香織/邦題の巧み度:★★★★★

「半地下」に住む貧乏な一家が裕福な一家に寄生して生きていく。金はあるところにはある、それを利用して何が悪いのだ、経歴詐称などは可愛いレベルだ―とコミカルに進む展開に途中までは爽快感すら覚える。ところが、キム家がさらに「地下」にいる人間と遭遇することにより一気に雲行きが怪しくなる。「半地下」と「地下」との住人は簡単に立場が逆転しうる。しかしながら、「半地下」や「地下」の人間が、「高台」に住むパク一家と同じレベルに達することは不可能に近い。「カフカの階段」のように、ひとつひとつ階段をずり落ちていった人間にとっては元に戻ることすら困難であるからだ。格差社会と言う言葉では片づけられないような、もっとひどい断絶社会は既に到来している。貧乏人の匂いは一度付いたら払拭されず、生粋の富裕な人間(本作で言えばパク家の長男)にはすぐに嗅ぎ分けられ、好むと好まざるに関わらず接触が拒否される。ラストには希望の光が見えるかもしれないが、格差間の交わりも一発逆転の人生も許されない社会の構造を示唆された後、私には絶望的に見えた。

富田優子/心の底から「リスペクト!!」と叫びたくなる度:★★★★★

世界的に問題となっている貧富の格差を背景とした本作は、果てしなく笑えて限りなく哀しい物語だ。事業の失敗、大学受験の挫折・・・と、ソウルの半地下に暮らす負け組一家が、ひょんなことから高台に豪邸を構える富豪一家に雇われる。そこから物語が一気に動いていくのだが、細部まで目が行き届き、想像し得ない展開には、釘付けになった。持つ者の無邪気ゆえの残酷さ、持たざる者の悲哀が端々に心をつついてくるのだが(「臭い」の描写が秀逸!)、特に主人公一家が豪邸でとんでもないことをやらかして、下へ下へと脱走しながら下っていく描写が格差社会を見事に象徴しており、本作のハイライトの一つであろう。
昨年のカンヌで本作とパルムドールを競った『家族を想うとき』も格差社会を扱っており、ケン・ローチ監督の怒りを重く受け止めたが、『家族を~』がひたすら暗く重い作品だったのに対し、本作は同じテーマを毒気とユーモアを混在させながら、超一級のエンターテインメントによくぞ仕立て上げたと感心する。ポン・ジュノ監督はじめ作り手側の才能に感嘆するばかりだ。また、ソン・ガンホが出演している映画にハズレなしと信じていたが、実際そのとおり。彼の飄々とした雰囲気が存分に生かされている。まさにすべてにおいて「リスペクト!!」。


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