【TIFF】ばるぼら(コンペティション)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

作品紹介

©Barbara Film Committee

手塚治虫原作、愛と狂気の寓話。
禁断の愛とミステリー、芸術とエロス、スキャンダル、オカルティズムなど、様々なタブーに挑戦した問題作。その独特の世界観から“映像化不可能”と言われた本作が、とうとう手塚治虫誕生90周年を記念し、初映像化。(公式サイトより引用)

クロスレビュー

鈴木こより/稲垣吾郎の体当たり演技に驚かされる度:★★★★★

人気作家が女で破滅していく様子を稲垣吾郎が体当たりで演じていて、怒涛のエロスに圧倒される。その女はミューズなのか、はたまた悪魔なのか。善悪を超えたキャラクター造形は手塚作品に通底するもので、その曖昧な魅力を二階堂ふみが見事に体現している。クリストファー・ドイルによる撮影が芸術的で、ラスト、逆光に浮かぶ彼女の裸体に息を呑む。”都会の排泄物のような女”という表現とはかけ離れた、神々しさすら感じるその姿が頭から離れなかった。

外山香織/映画ポスターも必見度:★★★★★

「漫画の神様」と呼ばれる手塚治虫は、常にアイディアが頭の中に湧き出てきたと聞いたことがある。「ばるぼら」は、創作の苦しみにあえぐ小説家と霊感を与えるミューズ(悪魔?)が描かれており、初めはなんだかそれが意外な気がした。しかし、「何か」を得るために自分の魂を差し出せるか、そういうテーマは他の手塚作品と共通していると思った。主人公の小説家はベストセラーも出した売れっ子であるが、満たされていない。書けない苦しさもあれば、作品を理解されない苦しさもある。創作する者はその葛藤から一生逃れられない―。ばるぼら役の二階堂ふみのコケティッシュな演技も素晴らしいが、稲垣吾郎が彼女に身も心も脱がされていく様も見事。個人的には映画ポスターも出色と思う。
 



第32回東京国際映画祭
会期:令和元年10月28日(月)~11月5日(火)
会場:六本木ヒルズ、EXシアター六本木(港区) ほか都内の各劇場および施設・ホールを使用
公式サイト:https://2019.tiff-jp.net/ja/

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