「山崎バニラの活弁大絵巻inゆめりあ2019~勇者のアイテム」レポート

「カツベン」の波を起こそう!映画を聴きに行こう♪ 

第2部ピアノ弾き語り

休憩をはさんで、山崎バニラさんが再登場。今度は洋装に着替え、髪も黒髪に。『豪勇ロイド』がピアノの弾き語りで上映された。バニラさんの衣装がとても素敵だ。

『豪勇ロイド』
(1922年/ 49分/アメリカ)
監督:フレッド・ニューメイヤー
出演:ハロルド・ロイド、ミルドレッド・デイヴィス

【バニラさん前説】
これから上映する作品はお祖母ちゃんがとても重要な人物ということで、本日の衣装は宮城県白石市の祖母が生前好きでよく着ていた着物を、母がリメイクして作ってくれたものを着てまいりました。最後にご覧いただきますのは、1922年大正11年封切りの『豪勇ロイド』です。主演のハロルド・ロイドは世界三大喜劇王のひとりと言われています。今でも丸メガネのことをロイドメガネなんて言ったりしますが、男女メガネキャラクターです。無声映画時代、コメディアンたちは強力なキャラクターが命でした。しかしロイドは普通であることが逆に新鮮で、メガネを掛けたことにより、庶民の生活に根差したギャグの幅が広がっていったそうです。

1922年というと約100年前で、もちろんCGの技術はありません。私が昔の映画を好きなのは、俳優さんたちの嘘のない凄いアクションにワクワクするのも楽しいからです。お祖母ちゃんとの心温まる物語『豪勇ロイド』ピアノ弾き語りでお楽しみください。

映像提供:(c)喜劇映画研究会

【ストーリー】
子供の時より気が弱く、損ばかりしてきた青年ロイド。恋人のミルドレッドの家では、やってきた恋敵の男にいたぶられ井戸に落とされて、濡れた服のままトボトボと家に帰っていく始末。そんな折、街では悪漢が出没しており、その男を捕まえるため保安官を募集していた。嫌々保安官の1人にさせられてしまったロイド。しかし彼は恐怖のため、悪漢を探すどころか、家に帰りベッドで震えて朝を迎える始末なのだった。そんな様子を見かねた祖母ちゃんは彼に、これがあったら英雄になれるという先祖伝来のお守りを渡す。御守りのご利益で別人のごとくたくましくなったロイドは、単身悪漢の元へと向かっていくのだったが…。



活弁がなくても本来十分に可笑しいロイド喜劇だが、それほどでもない何気ないギャグシーンも、山崎バニラさんの語りで可笑しさが倍増している。例えば、井戸に落ちたロイドが這い上がってくるとき「お皿が1枚足りませーん」と言ってみたり、そのさまを「元祖貞子」と形容してみたり、ロイドが着ていた服を形状記憶と言いきってしまい、それがその後の、濡れた服が極端に縮んでしまうというギャグの誇張へと繋がっていったり、バニラさんらしい脚色が、そこかしこに埋め込まれているのだ。説明(トリビア)、語り、会話とピアノのリズムが一体となって自然に流れていくのは、弾き語りだからこそなせる技なのだろう。

映像提供:(c)喜劇映画研究会

その中で今回もっとも感動したギャグは(ネタバレになるので細かいことは書けないのだが)、映画の中の登場人物の視線が、完全にバニラさんに降り注がれたところである。わざわざ演奏している場所からそこに移動したからこそ起きたことなのだが、まるで『カイロの紫のバラ』のワン・シーンを観ているかのようであった。100年近く前の俳優と現代の人の視線が合い、そのコラボでギャグが生み出される。こんなにもロマンチックで幸福なことはない。お祖母ちゃんの着物を仕立て直した洋服を着られていたことといい、この素敵なギャグといい、バニラさんの映画への愛がとても感じられる。軽妙なツッコミや脚色も、この愛があるからこそ、映画を決して汚すことがない、それどころか生き生きとした姿を現代に蘇みがえらせることに繋がっているのだろう。その秘密がわかったような気がした。

最後に山崎バニラさんの終演の挨拶をご紹介しよう。
「今年の12月に『Shall we ダンス?』の周防正行監督が何と、『カツベン』というタイトルで活動写真弁士を主人公にした新作映画を公開して下さります。私たち現役の活動弁士たちもロケに参加してまいりました。これから活弁の波がくるといいな、波を起こすぞと気合が入っております。今後ともどうぞよろしくお願いします」
今後もますます活弁が盛り上がっていくことを期待しています。

(舞台写真提供:公益財団法人 練馬区文化振興協会)

山崎バニラ(やまざき ばにら)プロフィール

(活動写真弁士)
2001年、無声映画シアターレストラン「東京キネマ倶楽部」座付き弁士としてデビュー。“ヘリウムボイス”と呼ぶ独特の声と、大正琴とピアノを弾き語る独自の芸風を確立。全国で活弁ライブを開催。声優としてもアニメ『ポチっと発明ピカちんキット』ポチロー役、『ドラえもん』ジャイ子役他出演作多数。著書に『活弁士、山崎バニラ』。宮城県白石市観光大使。自作パソコンで動画・音楽・アニメ・ホームページを作成。
Vanilla Quest オフィシャルサイト
http://vanillaquest.com/



今後の予定
(詳細は上記オフィシャルサイトでご覧ください)

山崎バニラの活弁大絵巻 in たかす
2019年7月19日(金)19:00開演(18:30開場)
■会場:たかすメロディーホール北海道上川郡鷹栖町南2条4丁目
■演目:『活動写真いまむかし』『豪傑児雷也』『荒武者キートン』

こども映画館(2019)
2019年7月26日(金)、8月3日(土)
活弁・演奏付き上映
■時間:各日13:30開演(13:00開場)
■会場:国立映画アーカイブ 小ホール(地下1階)

山崎バニラの活弁大絵巻2019~陽気な仇討ち
2019年10月20日(日)14:00開演(13:30開場)
《全労済ホール/スペース・ゼロ30周年記念》
■演目:『猿蟹合戦』『豪傑児雷也』『荒武者キートン』
■会場:こくみん共済 coop ホール(全労済ホール)/スペース・ゼロ(JR新宿駅南口 徒歩5分)

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トラックバック 2件

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