「山崎バニラの活弁大絵巻inゆめりあ2019~勇者のアイテム」レポート

「カツベン」の波を起こそう!映画を聴きに行こう♪ 

「山崎バニラの活弁大絵巻inゆめりあ2019~勇者のアイテム」が、2019年6月2日(日)、大泉学園駅北口ゆめりあホールにて開催された。今回は大好評だった2017年12月以来の当地での公演とあって、前売りは、瞬く間にすべて完売し、当日券なしという大盛況ぶりだった。会場に向かうエレベーターの中、お友達同士と思しきご年配の女性たちの会話が弾む。この日を本当に楽しみにされていたことが伝わってくる。ゆめりあホールでのバニラさんの公演は、老若男女、お友達や子供連れの家族で来られている方が圧倒的に多く、とてもアットホームな雰囲気なのだ。大昔、活動弁士たちが活躍していた時代、映画はこんな風に楽しまれていたのではないかと想像も膨らむ。

テーマ曲とともに、いよいよお馴染みの金髪和服スタイルの山崎バニラさんが登場。「お陰様でゆめりあホール再登場ということで、チケットは2カ月前に完売したのですけれども、なんか空席がありますね。今日のことを忘れちゃったのかもしれないですけれども、もし途中入場の方がいたら、すみませんがご協力ください。本日は勇者のアイテムと題しまして、スーパーラッキーアイテムに頼りまくる主人公ばかりが登場するお話をご紹介します」
忘れちゃったのかもというところで軽く笑いを取りつつ、遅れてくるお客様にも配慮するバニラさんらしい口上で観客の心をぐっと掴み、ショーは始まった。

第1部大正琴弾き語り

『心の力』
(1931年/ 12分/日本)
監督:大藤信郎
製作:文部省、千代紙映画社

【バニラさん前説】
今日最初にお送りするのは、1931年昭和6年封切りの千代紙アニメ『心のちから』です。当時の文部省製作の映画なのですが、突っ込みどころ満載です。作ったのは千代紙アニメの巨匠大藤信郎さんです。精巧な千代紙アニメは一歩歩くごとに絵を7枚必要としたそうです。大藤信郎さんは日本で初めて世界で認められたアニメーターと言っても過言ではありません。作風を千代紙アニメから色セロファン影絵に移し、1950年代にはヴェネチア映画祭、カンヌ映画祭に出品、賞を受賞(ヴェネチア国際記録・短篇映画祭特別奨励賞)し、あのピカソも絶賛したそうです。『心の力』はこの後第2部でご覧いただきます『豪勇ロイド』にオマージュを捧げて作られた作品ですので、ぜひ内容のほうも覚えておいてください。

【ストーリー】
冒頭は字幕に合わせた歌でスタート、まるでミュージカルアニメでも観ているかのような楽しさだ。楽器を弾きながら活弁どころか、歌まで歌う活動弁士は、日本で、いや世界で山崎バニラさんただ1人であろう。アニメーションは、伝統的な千代紙の模様が、桜の木になり、着物の柄になり、美しい。主人公は臆病者の団子兵衛。「日本一力札」という御守りを授かった彼は、さっそく子犬と黒猫を引き連れてお城の武術大会に乗り込んでいく。すると御守りのご利益か、見事優勝し、お城の姫君のお婿さんとなる。ある夜怪しいものに姫君がさらわれたところ、団子兵衛は子犬と猫を引き連れ救いに行くのだが、途中力札を落としたことに全く気が付かず、ピンチに陥るのだった…。



「勇気と臆病は心の持ちよう」なるほど、このテーマ自体は確かに文部省らしいのではあるが、犬の首が取れたり、人が怪物に食べられたりと、やっぱり何かがヘン。会場の子供からキャーという声も上がっていたほどで、バニラさんが説明の中でしきりに「文部省製作」を強調していたのも頷けるのだった。
追っかけっこをしていた猫と犬がいきなり野球を始める唐突な場面もかなりオカシイ。「シロキチ投げました。デッド・ボール、デッド・ボール、アハッ、なぜか始まるカウント・ダウン。…8、9、10、エイドリアーン」その予測が付かない展開はまさにツッコミどころ満載で、バニラさんの活弁もノリノリ、とてもリズミカルで、会場に笑いが波のように広がっていった。



『忍術千一夜』
(1939年/18分/日本)
監督:大伴龍三
出演:近衛十四郎、水川八重子

映像提供:(C)株式会社マツダ映画社

【バニラさん前説】
つづきましては、1939年昭和14年封切りの『忍術千一夜』をご覧いただきます。戦前から戦中にかけて年間100本もの低予算作品を量産し、庶民に愛された大都映画の作品です。松方弘樹さん目黒祐樹さんのご両親、近衛十四郎さん水川八重子さんのご出演作です。

お2人は本作の公開後2年後の昭和16年にご結婚されました。その翌年昭和17年、1942年大都映画が大映になった際には、お2人とも移籍せず、一座を組んで10年にわたり地方巡業の旅に出ます。これには戦時中思うように映画が撮れなかったというご事情もあったようです。近衛十四郎さんは2度目の招集を受け、敗戦とともに復員、映画界にカムバックします。その際、奥さんの水川八重子さんは女優業を引退、夫を支えます。その後は覚えている方もいらっしゃるかとは思いますが、テレビ時代劇で近衛十四郎さんは大活躍するようになります。

大都映画はB級感が売りでもありますが、近衛十四郎さんの立ち回りのシーンになりますと、この特撮B級忍術映画で、こんなに素晴らしい大立ち回りが見られるとは、という掘り出しもの的な喜びを味わっていただくことができます。

【ストーリー】
とあるお城まで長い道のりを歩いてきた田舎侍穴山新八(近衛十四郎)と蜂の巣(クモイ・サブロー)途中仙人がなくした誰でも自由に忍術が使えるという巻物を拾う。忍術の腕が買われたふたりは三百石でお城のお召し抱えとなる。この城の桜姫は隣国の殿様から求婚されていたが、城主はそれを断る。何とかして姫と結婚したい隣国の殿様は、女スパイ間諜ロノ3番(水川八重子)を使って城を攪乱、その隙に姫を連れ去っていく。桜姫にひとめぼれした穴山新八は、蜂の巣と共に忍術を使い姫を救おうとするのだが、女スパイに騙され巻物を奪われなす術がなくなってしまうのだった…。大正琴そして、忍術が使われる時など、ここぞという時に叩かれる太鼓の音が歌舞伎風で切れよく、時代劇にぴったりマッチ、雰囲気を盛り上げる。しかしお話はB級なのであった。



大都映画の作品といえば、いつもツッコミどころ満載である。この作品も、観ていてとても気になる場面があった。どこかの庭園で撮影をしているのだが、植え込みの柵が、江戸時代なのに竹垣ではなく、いかにも公園然としたアーチ型のやつなのである。いかにもその辺の公園で手早く撮りましたというのが見え見えだったのだが、実はここにはバニラさんのツッコミは入っていない。そのことが、この作品にいかにツッコミどころが多いかということを表しているように思える。それでも低予算なりに面白いものを作りたい、出演者たちのそんな心意気が画面からは伝わってくる。そこが涙ぐましく愛しい。

これはまさに山崎バニラさんの本領が発揮される作品なのだ。「おっと、影が丸見えですが、首が浮いているつもり」と特撮のチャチさゆえの観客の疑問にも、きちんと答えてくれている。あるいは隣国の殿様が嫌われる理由も、バニラさんにかかると「隣国の殿様は髪型の評判がヒジョーに悪い」となってしまう。「あれっ、虎の巻持っていないと忍術使えない設定はどうなっているんだよー」巻物を持っていない人がドロンっと消えてしまうという、作品の根幹を揺るがす出来事にもしっかりツッコミ、場内は大爆笑。映画の楽しさが、2倍、3倍に膨らんでいったのだった。

NEXT<第2部ピアノ弾き語り>

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