『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』本作はワイズマン監督からのラブレター

公開記念イベント:ニューヨーク公共図書館と<図書館の未来>より

●手軽に理解しようとすることに慣れてしまった私達への挑戦状
菅谷さん)「自分が本(『未来をつくる図書館』)を出した時に、これをドキュメンタリーにしたらいいなと思っていました。この映画は手法がユニークで、観客が透明人間になったかのように図書館に潜り込んで、その現場に立ち会わせてくれます。本作は作り手によって解釈されたものではなく、観る人それぞれが提示された生の素材を理解するという知性が問われる作品です。あるいは手軽に理解しようとすることに慣れてしまった私達への挑戦状かもしれません。知とは何かということを考えさせられる素晴らしい映画だと思います」

●「図書館とは人である」という言葉に共感
菅谷さん)「イベントもあって本もあって、マンハッタンに住み続けている理由はNYPLのそばに住みたいからです。本館の前にミッドマンハッタンブランチといわれる大きな分館があるのですが、その改装についてスタッフを集めた説明会が行われました。映画では、建築家のオランダ人女性が登場し、『図書館は本のための書架ではなく、人のためにある』とその本質を語ります。ワイズマン監督もこのシーンに共感されているのか、結構尺を割いています。この方は図書館の建築について定評があり、世界中の図書館を手がけています。ちなみに、この分館は今年の末にリニューアルオープンします」

映画のダイジェストを見ながら作品解説をするゲストのお二人

(後記)撮影自体は2015年の秋、1年以上の編集期間を経てアメリカで公開されたが、映像の中で議論されていた案件はすでに過去のものになっていたり、NYPLは日々どんどん進化している。時代に合わせてサービスや資料の形態も変化していくなかで、議論の中心にあるのはいつでも「そのサービスは市民の社会的機会を向上させられるのか」ということ。この舞台裏から見えてくるブレない哲学にこそ、名実ともに世界一といわれる理由があるのではないだろうか。

5月18日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー!


ローズ・メイン・リーディング・ルームはフットボールの競技場ほどの長さをもつ巨大スペース

 

世界的に評価されているピクチャーライブラリーは、版画や写真のほか、TV映像も含めてコレクションしている

 

職員がミーティングして議論しているところまでカメラが捕らえている

「寄付金の使い方から、電子化と紙との葛藤にいたる議論の内容まで、カメラは捕らえている。市民に対するサービスを常に考え、デジタル格差を解消するためにネットアクセスポットを提供したり、熱意をもって市民のためのIT環境について取り組んでいる。デジタル社会において図書館が中心的な役割を果たしていこうという理念が素晴らしい」(菅谷さん)

本イベントを動画はこちらからご覧になれます(配給会社ムヴィオラ提供)


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