【TNLF】サマー・チルドレン

映画と。ライターによるクロスレビューです。

作品紹介

1960年代、両親が離婚し、エイディスとカリの兄弟は母親の元に引き取られる。まだ5歳と6歳に過ぎない子供を抱えた母親は、なかなか自分の足場を見つけることができずに、彼らを郊外の一時預かり施設サマー・チルドレンに預けることにする。しかし、子供たちの予想以上に滞在が伸びると、彼らは施設を脱走する。アイスランドの広大な自然の中を進む彼らの目の前で、子供ならではの現実と空想の世界が交差する。グズルン・ラグナルスドッティル監督は本作が初長編映画となる。

クロスレビュー

鈴木こより/子どもにとってママがすべて度:★★★★☆

日本では児相から自宅へ帰された少女が虐待死して大問題になっているが、本作では施設でひたすら母を想う子どもの気持ちが描れていて、子どもにとって母親の存在は絶大なのだと改めて思う。
町外れの荒涼とした丘の上にその施設はあり、夏の間だけ預けられる子は”夏の子供”、一年中預けられる子は”冬の子供”と呼ばれている。大人にとって、その違いは単なる”時間”の差かもしれない。でも、子どもは母と一緒に過ごす時間を”愛情”としてシビアに受け止めている。さらに「良い子にすれば迎えに来てくれる」という職員の都合の良い嘘に裏切られ、傷ついていく。本作は、大人が想像する以上に子どもが多くを感じ、本能で理解しているということを、彼らの目線で幻想的に表現している。これは60年代の物語だが、離婚する夫婦が増え続けている今、子どもの心のケアは進歩しているのだろうか。

藤澤貞彦/孤独な子供たちへの御伽噺度:★★★★☆

アイスランドの大自然に圧倒される。夏だというのに荒野を吹きすさぶ冷たい風。大きな岩山、何処までも広がる荒地、湖、パウダー・ブルーの空に低く浮かぶ真っ白い雲。地球が始まってから変わっていないかのようなこんな景色のところに閉じ込められたら、大人だって心がブルーになってしまう。この閉塞感がいかにもアイスランドという感じがする。
 事情で親と離れて暮らさなければならなくなった子供の孤独が幻想を生む。鷹のような顔をした園長は、そのまま北欧神話のフレースヴェルグと呼ばれる怪鳥に姿を変え、岩山は巨人の姿になり、馬は水の上を走る。全編にどこか死の匂いが漂っている。これはまだ現世と神の領域に跨って生きている子供たちの物語。敢えて60年代とした時代設定も、これが現実ではなくて昔話であることを示すための手段であったようにも思える。これは子供の視点に寄り添った、孤独な子供たちに贈られた御伽噺なのだ。

【開催概要】 トーキョーノーザンライツフェスティバル 2019

会場:ユーロスペース 会期:2019 年 2 月 9 日(土)~15(金)
主催:トーキョーノーザンライツフェスティバル実行委員会
公式サイト:http://tnlf.jp/ (スケージュール詳細はこちらから)
Face book:https://www.facebook.com/tnlfes
Twitter:https://twitter.com/tnlfes
【チケット情報】
ユーロスペース公式ウェブサイト、劇場窓口にて上映 3 日前より販売! 一般 1,500 円 学生・シニア・ユーロスペース会員 1,200 円
*ユーロスペースの火曜日サービスデー 1,200 円が適用されます。

トラックバック URL(管理者の承認後に表示します)