(ライターブログ)メアリーの総て

映画鑑賞後、「フランケンシュタイン」を読んでみた~孤独なメアリー=怪物の感情に圧倒される

出版にこぎつけるまでのプロセスは、メアリーが女性でなければこんな苦労はしなかったはずだろう。多くの出版社から「女」という理由で断られ、ようやく引き受けてくれた会社からもある条件が出され、忸怩たる思いを抱いたに違いない。それでもこの小説が世に出ることに光明を見出す。1831年の第3版にメアリーが加筆したまえがきには「作中のすべてのエピソードは、パーシーの助けを得たものではない」ことがぴしっと書かれているのが、何とも痛快だ。「女だからってバカにするな!」というメアリーの気概が感じられる。また同じくまえがきにはこの小説を「醜いわが子」と形容しているが、映画のラストシーンのメアリーの穏やかな表情を見ると、過去の苦い感情を“醜い”と振り返る境地に至ったようで、うれしく思えた。

ただ本作では、このエピソードはどこから着想を得たのかとか、この人物を登場させたのはなぜかなど、細かい創作過程が描かれているわけではないので、すでに小説を読まれている方には物足りない点もあるかもしれない。とは言え、メアリー自身、200年後に自身の人生が映画化されることも、「フランケンシュタイン」が名作として今もなお読み継がれていたり、映像化されたりするとは予想だにしていなかっただろう。でも、よくよく考えれば「フランケンシュタイン」自体はポピュラーでも、その著者の人生はあまり知られていないような気がする。映画で彼女の闘いの人生に寄り添い、併せて小説を読んでみるのも、楽しみ方の一つではないだろうか。

・参考資料
「フランケンシュタイン」(メアリー・シェリー著、芹澤恵訳、新潮文庫、2015年)


12月15日(土)シネスイッチ銀座、シネマカリテ他全国順次ロードショー
© Parallel Films (Storm) Limited / Juliette Films SA / Parallel (Storm) Limited / The British Film Institute 2017

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