国際交流基金 映像事業部 映画チーム 寺江瞳さん

『カメラを止めるな!』も大反響、広がる日中の映画交流

ーー今年5月に日中映画共同製作協定が施行しました。合作を模索する日本の映画会社などからの相談はありますか?

寺江:もちろんたくさんあります。基金は直接の窓口ではないのでユニジャパンさんをご案内する形になるんですけど、問い合わせは増えています。あと、基金がこの日本映画上映会のような映画祭をやっていることは知られているので、何か関われることはないかというご相談も受けます。

今とても日中合作が進んでいて、9月と10月にユニジャパンによる日中映画共同製作協定の説明会があったのですが、1回だとすぐ満席になったので、急きょ2回の開催を決め、両方とも満席になったようです。本当に関心が高いですね。

ーーなんとか中国との合作にして、市場を拡大したいと。

寺江:日本にとっての一番のメリットは、合作だと中国映画扱いになるため、外国映画として参入しにくい状況が改善されることです。

ーー今のように買われたまま眠ってしまう心配もない。

寺江:私たちがこの事業を進める前は、まだそこまで合作への関心が一般的ではなかったんですけど、ここ1、2年ぐらいで状況がかなり変わりました。あと、今、日中関係が極めていいので、そういったことも追い風になって盛り上がっています。

ーーかつては、日中文化交流というと国民感情や関係改善のためという印象がありましたが、今は少なくとも中国の若者にそういう感覚はなさそうですね。

寺江:もはや陸続きのように捉えている印象があります。基金では上映会後にアンケートを取っていて、「日本に対する印象は変わりましたか」という質問もしているのですが、「変わらない」という回答が多い。というのは、もともと印象が良いんです。もちろん「良くなった」という答えもあるんですけど、「悪くなった」と答える人はほとんどいない。

「映画ファンと監督の交流サロン」(深センブロードウェイ電影センター)で映画ファンの質問に答える石井裕也監督

もともと日本のことをよく知ってる人が多いんですね。中国は人口が多いので、全体の中では日本に関心のある人の割合が少しだったとしても、それだけですごい人数になる。日本で行う中国映画の上映会などに比べ、何事も参加者は10倍くらいになります。

中国の若い人が日本語を学ぶモチベーションも、幼い頃から日本の映画やアニメ、マンガを見て育ったからと言う人が多い。この映画祭も、そういう人を育てるきっかけになればいいなと思っています。

ーー今年は日中平和友好条約40周年記念、昨年は日中国交正常化45周年と、日中関係の節目にあたりました。今後の展開は?

寺江:まず今年度は、来年1月に上海ともう1都市で、東京国際映画祭、上海国際映画祭との3者で実施する日本映画祭を予定しており、6作品を紹介する予定です。

この秋の上映会は現地の共催相手を見つけるところから基金だけでハンドルしています。上海や北京などの大都市には既に大きな国際映画祭がありますが、たとえば重慶や広州は、街は大きいものの、日本映画をまとめて見られる機会が少ないので、とても歓迎いただいています。国際交流基金としては、今後も映画を通じた交流を大事にしていきたいと考えています。

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