【FILMeX】8人の女と1つの舞台(特別招待作品)
【作品紹介】
舞台復帰をめざすかつてのスターと、同じ舞台で初出演となる人気女優など、8人の女性たちが演技合戦を繰り広げる華麗なバックステージもの。香港、中国のスター女優たちが女性映画の名匠スタンリー・クワンの下に集結した。(東京フィルメックス公式サイトより)
【クロスレビュー】
藤澤貞彦/香港のロマン度:★★★☆☆
「若いころよく、ヴィクトリア・ハーバーのベンチに座っていたわね。どんどん小さくなっているけれど」言うまでもなくヴィクトリア・ハーバーはイギリス植民地時代の名残の名前、夜景の名勝地。主人公たちのこの最後のセリフに、開発が進み、消えゆくかつての香港の姿への郷愁が感じられる。そもそもこの企画自体が、イギリス植民地時代の名残を残すシティ・ホールの取り壊しに反対するというところから、企画されたものだという。一世を風靡した香港のスター女優で歌手のジジ・リョン、サミー・チェンの共演、いかにもという姿の、味わいある楽屋、ちょっと古風とも言える物語のすべてが、今への抵抗になっているようにも思えてくる。若い女優が「シティ・ホールなんて小さいホールじゃないの」小馬鹿にしたように、シュウリン(サミー・チェン)に言う。シュウリンは何を言っているのとでもいうかのように笑う。香港は、新しくなり続け、巨大化することによって、夢をどこかに置き忘れてきたのではないか、あなたにはそれはわからないわね。そんな思いが感じられる。香港の夢・・・香港映画全盛時代を生きてきたスタンリー・クワン監督だからこその、説得力である。
富田優子/過去への哀愁度:★★★☆☆
夫を亡くし、久しぶりに舞台復帰をするかつてのスター女優と、初の舞台出演となる新進女優が共演することに。因縁のある二人を中心に演出家、プロデューサー、付き人、友人などが絡み、舞台初日までの1週間の人間模様を描いた作品だ。稽古中に女優の間でネチネチと交わされる嫌味の応酬(舞台の台本無視)などのエピソードも面白いし、それぞれが個性的なキャラクターで映画を盛り上げる。ただそのなかに一抹の寂しさも感じたのは、本作の舞台となった劇場が取り壊されて改築されることが決まっているからか。香港返還から21年、英国の植民地時代の薫りが漂う劇場は、もうただの遺物でしかないのかもしれない。劇中でも新進女優が偶然乗ったタクシーのドライバーが彼女のデビュー作の監督(!)だったというエピソードがある。香港映画が輝いていた時代は過ぎ、彼に「香港映画は死んだ」と言わしめるなど、どこか過去への哀愁の思いが込められた作品だった。
▼第19回東京フィルメックス▼
【期間】2017年11月17日(土)〜11月25日(日)
【メイン会場】有楽町朝日ホール(有楽町マリオン)11/18(日)〜11/25(日)
【オープニング/レイトショー会場】TOHOシネマズ 日比谷11/17(土)〜11/25(日)
【特別上映会場】有楽町スバル座 (11/17(土),11/18(日)のみ)
【併催事業:人材育成ワークショップ】
11/19(月)〜11/24(土) 有楽町朝日スクエアB
主催:特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会
共催:朝日新聞社
公式サイト: https://filmex.jp/2018/