【TIFF】山崎バニラの活弁大絵巻in TIFFチルドレン

TIFFに山崎バニラさん初登場!映画祭を盛り上げる。

 TIFFユースは若い方に映画に親しんでもらいたいという思いから、2016年から始まった企画である。その中でも昨年から始まったTIFFチルドレンは小学生以下の子供を対象に作品が選定されている。これまでにもサイレント映画は、日本映画クラシックス部門などで上映されることもあったが、TIFFチルドレンでは1回目からサイレント映画が選ばれ、『キッド』『キートンのマイホーム』が古後公隆さんのキー・ボード・チェロの演奏で、上映された。

 10月27日、2回目となる今回は「山崎バニラの活弁大絵巻in TIFFチルドレン」と題し、声優でもお馴染みの、活動弁士山崎バニラさんの演奏と活弁により、『大当たり空の円タク』『ロイドの要心無用』が上映された。全国で展開する活弁大絵巻の公演や京都国際映画祭などで活躍されているバニラさんだが、東京国際映画祭での公演は、もちろん初めてのこと。会場もシネコンとあって、いつもとは違う雰囲気ではあったが、進行役の矢田部吉彦さんの紹介で、大きな拍手とともに山崎バニラさんが登場し、開口一番「客席を見渡しますとチルドレン?」とツッコミを入れると、場内のとても子供には見えない(若者にも見えない)観客たちは大爆笑、会場はたちまちにしていつものバニラ・ワールドに染まっていった。

 「わぁーありがとう!チルドレンの方もたくさんいらっしゃいますが、本日はお子様から大人まで楽しんでいただける演目をご覧いただきます。活動写真弁士、弁士はそれぞれ自分で台本を書きますので、弁士によっては同じ映画でも印象がガラリと変わるのが見所とも言えます。弁士は全盛期には8000人近くいましたが、現在では、約十数名、なかでも楽器を弾きながら活弁をするのはわたくし1人でございます。本日最初にご覧いただきますのは、1932年、昭和7年封切りのマンガ映画『大当たり空の円タク』です。1932年公開当時から見た近未来、しかし今となってはひと昔前、1980年昭和54年の日本を描いた大変楽しいSF漫画映画です。大正琴を弾きながら活弁いたします。大正琴はタイプライターに着想を得て開発された楽器で、左手でボタンを押しながら右手で弦をはじけば音が出る楽器です。ちょうど無声映画が全盛となりかけている大正元年に開発された楽器です。それではアニメ大国日本の原点をごゆるりとお楽しみ下さいませ」

 『大当たり空の円タク』は、おそらく27年製作の『メトロポリス』の影響から昭和54年の空にタクシーを飛ばしてしまったのであろう。それにしても、雲の中に入れば風神や雷神がいたりして、日本的で牧歌的なアニメーションである。シューベルトの「魔王」を大正琴で。それが妙に画面に合ってしまうのは、どちらもドイツ起源(正確にはシューベルトはオーストリア出身だけれど)だからなのか。もちろんツッコミどころも満載。途中から悪役たちの顔が似てきて区別がつかなくなる絵の稚拙さにもしっかり突っ込んで、バニラ節が炸裂。場内は大爆笑に包まれた。

 『ロイドの要心無用』では、冒頭から子供たちの笑い声が会場に響き、これが東京国際映画祭の催しであることを忘れてしまうほど。映画の有名なクライマックス、ロイドによるビル・クライミングが始まると、一転子供たちはシーンと静まり返り、悲鳴を上げた子供もいて場内に笑いが起きたのもご愛敬。文字通り子供から大人までたっぷり楽しんで、時間はまたたくまに過ぎていった。

 常日頃、映画祭とは観客も育てるところと思っている。今回のTIFFチルドレンのこの企画。笑い転げていた子供たちは、果たして映画の面白さに目覚めてくれただろうか。この子たちが来年も再来年も観にきてくれて、映画を好きになってくれたとしたら、こんなに素敵なことはない。出来れば山崎バニラさんの再びの登場も期待して。



第31回東京国際映画祭
会期:平成30年10月25日(木)~11月3日(土・祝)
会場:六本木ヒルズ、EXシアター六本木(港区) ほか都内の各劇場および施設・ホールを使用
公式サイト:https://2018.tiff-jp.net/ja/

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