【TIFF】アマンダ(原題)(コンペティション)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

作品紹介

© Nord-Quest Films

自由に生きる青年ダヴィッドと親を失った姪のアマンダが、突然の悲劇をともに乗り越えようとする。美しい夏の陽光が降り注ぐ家族の愛と再生の物語。人気若手俳優V・ラコストと愛くるしい少女のコンビから目が離せない感動作。

クロスレビュー

藤澤貞彦/静かに優しく寄り添う度:★★★★☆

大切な人を亡くすこと。『アマンダ』は幸福期、事件直後、回復期の道中を細やかに、母親を失ったアマンダを中心に、残された者たちの関係性の変化や、その気持ちを丁寧に描いている。この作品では、事件の全貌については詳しく描かれない。異様な静けさをもって描いている。また、アマンダの母親のお葬式の場面が描かれるわけではない。そのことによって、より喪失感が胸に迫ってくる。「エルビスはすでにビルを出ています」劇中に出てくる象徴的な言葉。“それ”がすべての終わりではないことが丁寧に提示される。例えば、亡くなった者が残してくれたものをふと見つけたり、アマンダの面倒を見る24歳の伯父と彼女が一緒に自転車を漕いで走り抜ける時に彼女に母の面影が宿ったり、親戚の者に血縁の相似を発見したり。答えは決して出ないが、さまざまな可能性が見えてくるラストが素敵である。

鈴木こより/少女の瞳が語る、声なき声:★★★★★

パリの路地裏に響く母娘の笑い声。美しい街並みと小粋な会話に心が弾み、物語への期待は否応なく高まってくる。しかしアマンダはこの愛おしい日常と母を一夜にして失ってしまう。世界を奪われた彼女の運命は、若干24歳の叔父に委ねられることに。2人の人生はこの出来事によって一変してしまうのに、街は再びいつもの風景に戻っていく。声高ではないけれど、本作はこのギャップが強烈に効いてくる。まるで悲しみを封印するかのように、未来の可能性を秘めた少女の肉体は生命の輝きに満ちている。不思議なほど悲壮感は感じさせないが、それだけに彼女の気持ちが溢れ出るラストは心揺さぶられる。



第31回東京国際映画祭
会期:平成30年10月25日(木)~11月3日(土・祝)
会場:六本木ヒルズ、EXシアター六本木(港区) ほか都内の各劇場および施設・ホールを使用
公式サイト:https://2018.tiff-jp.net/ja/

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  1. ここなつ映画レビュー

    「アマンダと僕」

    本作は、昨年の第31回東京国際映画祭で、コンペティション出品作品の中で東京グランプリを獲得した作品である。私は東京国際映画祭は大変好きなイベントであり、近年は毎年欠かさず行って、主にコンペティション作品を鑑賞するのが慣わしなのであるが、例年東京グランプリの授賞作品には疑問を持っている。平たく言えば「何故この作品がグランプリ…?」という作品が多いと思うからだ。グランプリ授賞作品はコンペティション出品作品の中でも最も優れた作品に与えられるということを考えたら、「いや、これじゃないでしょ…」と思う作品のあ…

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