【TIFF】翳りゆく父(コンペティション)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

作品紹介

©ACERE , 2018.

母を亡くした少女は怪しいおまじないで願い事を叶えようとし、落ち込む父はリストラに怯え、次第に様子がおかしくなっていく。純真な少女と沈鬱な父親の家族物語にホラーが加わった、エモーショナルなスピリチュアル・ドラマ。

クロスレビュー

富田優子/崇高でもあるが、グロくて・・・度:★★☆☆☆

亡くなった母親を今も慕う主人公の少女。妻を亡くした後、娘とどう接して良いか分からず彼女の世話を妻の妹に任せっきりの父。少女は“おまじない”を使って家族の絆を甦らそうとするが、その再生の結果が何ともおぞましくもあり、崇高でもあり・・・。少女がジョージ・A・ロメロ監督などの作品を食い入るように見ていたのは、それが彼女の願いでもあることを意味している。本筋は不完全な関係の父と娘のホームドラマだが、そこにホラーの要素を盛り込み(加えて土着の匂いも強い)、現実なのか妄想なのか、その境界を浮遊する摩訶不思議な作品となっている。ゾン〇映画もコンペティション部門に出品されたことで、やはり今、この分野は需要があるのだろうな・・・と思った次第。ただグロテスクな描写には好みが分かれるだろうし、特になぜか一夜にして育った“植物“の描写は、残念ながら私にはムリだった。

藤澤貞彦/むしろラストに近づき翳りゆく私の心度:★★☆☆☆

亡くなった母親に会いたいという少女の気持ちはわかるのだが、ゾンビになっても戻ってきてほしいという感覚は、残念ながらわからない。確かに世界には、骨の状態になるまでは死者の世界と現生との中間で彷徨っている状態という考え方もあるにはあるのだが…。この作品には、コックリさんをはじめ様々なまじないが現れる。にしても、少女の叔母が白魔術の本を姪にプレゼントするというのもなんだか凄い。これらのものが日常の中によほど浸透しているのだろう。元来、南米という土地は中世ヨーロッパの不気味な美術や、原住民のアニミズム、アフリカ奴隷の原始宗教などさまざまなものが混ざり合い、今日まで残っている。いわば、ここは魔術の交差点。そんな不気味なムードが好きな人には堪らない作品なのかとも思う。



第31回東京国際映画祭
会期:平成30年10月25日(木)~11月3日(土・祝)
会場:六本木ヒルズ、EXシアター六本木(港区) ほか都内の各劇場および施設・ホールを使用
公式サイト:https://2018.tiff-jp.net/ja/

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