(ライターブログ)ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の「ドナテッロ」って!?

華麗なるダヴィデ【映画の中のアート #17 】

ドナテッロ「ダヴィデ」

しかし、ドナテッロのダヴィデが「一般的な」作品かと言うとそうじゃないと思うんですよね。十分革新的だったと思います。ダヴィデは羊飼いではなくナヨッとした都会っ子のように見えますし、こだわるようですが帽子と脛当てのみ着けてるってやっぱりヘン(ミケランジェロのダヴィデはいさぎよく?素っ裸)。そもそもこのダヴィデは当時フィレンツェを支配していたメディチ家より発注され、その邸宅の中庭に設置されたもの。私的な目的のために私的な場所に置かれていた彫刻なんですね。その後、メディチ家追放を契機に、1495年には公的な場所に設置されました(現在はバルジェロ国立美術館に展示)。当時のフィレンツェ市民がこの像を見てどう思ったか知りたいですね。他にもドナテッロは「えっ!?」と思うような独創的な作品を作っています。木彫りの「マグダラのマリア」(1457)とか、ちょっとビックリです。

ドナテッロ「マグダラのマリア」

さて、これまでにフィレンツェにある三つのダヴィデ像をご紹介しましたが、なぜこんなにダヴィデ像が作られているのか? 実は、敵を倒すダヴィデがフィレンツェと言う都市の守護的存在だったことも理由のひとつと言えます。先述したヴェロッキオの作品はメディチ家の依頼により作られ、こちらもドナテッロの作同様の経緯を辿ります。一方、ミケランジェロの作品はメディチ家が追放された後の共和政のフィレンツェにより依頼された公的な作品で、最初から公的な場所に置かれるものとして作られました。ミケランジェロのダヴィデはフィレンツェ政庁舎であるヴェッキオ宮殿の入口に置かれ(これも設置場所については紆余曲折がありましたが)、19世紀にオリジナルはアカデミア美術館に移されました。現在宮殿の入口にあるのはコピー作品です。あとひとつ、フィレンツェにあるものではありませんがダヴィデ像として有名なのはバロックの巨匠ベルニーニ(1598-1680)が制作したローマにあるダヴィデ(1623-24)。こちらは石を投げる直前のダヴィデ。この躍動感、さすがベルニーニ、さすがバロック!と言えます。

ベルニーニ「ダヴィデ」

しかし、いろいろなダヴィデ像がある中で、なぜイタリアは映画の賞としてドナテッロのダヴィデを選んだのでしょうか? どなたか詳しい方がいらっしゃれば教えてほしいところです。いずれにせよ分かることは、このドナテッロのダヴィデは600年近くたった今でもイタリアの人々に深く愛されているということ。ちなみに、現在のダヴィデ像は黒々していますが、当初は一部鍍金されており、それが経年のため剥がれおちたとのこと。よく見るとところどころ金メッキが残っています。ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の像は全部金ピカですが。今度この映画賞のニュースがあったら、ぜひこのダヴィデ像に注目してみてください。

▼彫刻▼
ドナテッロ「ダヴィデ」 1430年代
バルジェロ国立美術館/フィレンツェ、イタリア

ミケランジェロ「ダヴィデ」 1504年
アカデミア美術館/フィレンツェ、イタリア

ヴェロッキオ「ダヴィデ」 1470年代
バルジェロ国立美術館/フィレンツェ、イタリア

ドナテッロ「マグダラのマリア」 1457
サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂ドゥオーモ付属美術館/フィレンツェ、イタリア

ベルニーニ「ダヴィデ」 1623-24年
ボルゲーゼ美術館/ローマ、イタリア

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