『1987、ある闘いの真実』チャン・ジュナン監督インタビュー

「その真実をなぜ誰も伝えないのだろうか?」30年前に抱いた疑問

——時代考証の苦労を教えてください

脚色をする作業を進めるにあたり、朴槿恵政権下だったので、このような作品を撮ればどんな不利益を被るのか分かりませんでしたから、準備作業は秘密裏に行いました。
実話をベースにした映画づくりになるので、実際のモデルがいます。本来であれば、そうした方々にお会いして、当時の様子をインタビューする作業を行うべきだったのですが、そうすると私たちがこの映画をつくっているという噂が立ってしまうので、文字資料に頼るしかありませんでした。当時の新聞や雑誌など、関連するテキストを集めて勉強し、シナリオに落とし込んでいきました。

チャン・ジュナン監督

——準備作業を秘密裏に行う必要がある作品となると、参加を躊躇する人もいたのでは。キャスティングは順調でしたか?

キャスティングのための準備稿が出来たときに、数人の俳優に用心深くそのシナリオを見せたんです。その中の1人が、イ・ハニョル役のカン・ドンウォンさんでした。
そのときは、まだ崔順実(チェ・スンシル)ゲート事件(*)が明るみに出ておらず、朴前大統領の汚職が明かになっていなかった時期。にも関わらず彼は、分量的に小さな役ではあるけれども「非常に重要な役割なので是非やらせてほしい」と大きな力を添えてくれました。

カンさん以外のキャスティングを行っている最中に、崔順実ゲート事件が明らかになり、状況がドラマチックに変わっていったのです。とはいえ、今後どうなっていくのか、まったく分からない状況ではありました。それでも、多くの俳優が勇気を持って、志を私たちと共にしてくれました。制作過程において、周りの状況の変化などがうまく噛みあい、奇跡的にこの映画が作られていったのです。大きく変わった点は、「シナリオはいいんだけど、朴槿恵政権下ではちょっと難しいのではないのか」と言っていた出資会社の人たちが、突然「やりましょう」というさまざまな形の提案をしてきました。それからは、本当に順調に物事が進んでいきました。

*崔順実(チェ・スンシル)ゲート事件:2016年10月に明るみに出た、朴槿恵大統領(当時)とその友人の女性実業家・崔順実氏との政治スキャンダル

——デモのシーンなど、当時を再現した映像に迫力がありました。撮影の苦労を教えてください。

2017年、韓国の夏も非常に暑かったんですね。そのような暑い時期に、大勢の人たちが一緒に行動しなければいけませんでした。私は群集シーンの撮影経験が豊富ではないので、妻のムン・ソリ(『ペパーミント・キャンディー』『オアシス』などに出演している女優)がいろいろ助けてくれました。彼女自身、デモに参加した経験から、スローガンの叫び方やスクラムを組む理由などをエキストラの皆さんに教えてくれたりするなど、手助けしてくれました。
セットについては、明洞(ミョンドン)やソウル市庁前の広場、延世大学の前の風景は当時と今とでだいぶ変わってしまったので、セットを作ってブルースクリーンを張り、CGを使って作っていきました。

『1987、ある闘いの真実』より

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