(ライターブログ)イタリア映画祭2018を振り返る

「いつだってやめられる」シリーズが歓喜のフィナーレ!

「チャンブラにて」:★★★☆☆【大阪上映もあり】
流浪の民だった祖父たちが行き着いたチャンブラというロマのコミュニテイ。そこは町の中心部から外れ、粗大ゴミが捨てられていくような場所にある。14歳の少年ピオは、ゴミの山で拾った自転車やバイクに乗って子供たちと遊んでいるが、ある日を境に、兄貴たちの代わりに町へ出かけ“盗み”を働くようになる。このコミュニテイの子供たちは学校へも行かず、当たり前のようにマフィアの配下に組み込まれていく。到底褒められたものではないが、家族を養うために悪事を働くピオを責める気にもなれない。ただ、流浪の民として、貧しくも誇り高く生きてきた祖父の姿とはあまりにも対照的で、祖父の「われわれは世界に反する者」という言葉が哀しく響く。ピオも家族も実名で登場しておりドキュメンタリーのような形で撮られているが、今回の撮影をきっかけに、この聡明な少年の未来が少しでも明るくなればと願う。

「フォルトゥナータ」:★★★☆☆【大阪上映もあり】
ジャズミン・トリンカを初めて知ったのは、イタリア映画祭2004でも上映された傑作『輝ける青春』(2003)で、その美少女ぶりと憂いのある眼差しに強烈な魅力を感じた。美人で繊細なイメージが強かったので、「ずっとそういう路線でいくんだろうな」なんて思っていたけれど、本作では野性味溢れるマンマ(母親)を堂々と演じきっていて、まさにマンマ・ミーア!(なんてこった!)な作品だ。彼女自身も今回ゲスト登壇した際に、「この歳(37歳)になって、やっとソフィア・ローレンなどが演じてきたような南部のマンマというものを演じることができて光栄だし、主人公の名のとおり幸運です」と話している。カンヌ(「ある視点」部門)でもその演技が評価され、最優秀女優賞を受賞。そのキャリアでターニングポイントになる作品だろう。DVや貧困がはびこり、男性優位の南部の土地で、少女がいかにしてマンマになっていくのか。親から子へ受け継がれる、負の連鎖を見つめた作品。

「愛と銃弾」:★★★★☆【2018年秋に公開予定】
マネッティ兄弟監督による映画愛に溢れた作品。終映後のQAでも「鳩の演出はジョン・ウー監督の影響だよ」と語るなど、古今東西の名作へのオマージュが散りばめられていて楽しい。舞台は監督が「文化の首都」と称するナポリ。これまた多くの映画監督から愛されてきた場所であるが、今作では“ナポリ人によるナポリへの愛憎”がブラックユーモアたっぷりに描かれる。アメリカ人観光客を『ゴモラ』の舞台になった集合住宅に案内し、負のイメージを逆手にとって金儲けするシーンなど皮肉が効いている。主人公はかつての恋人の命を助けるためにマフィアから追われる立場に陥るが、全編を通してノワール的な重苦しさはない。ミュージカル要素を取り入れていることもあるが、それ以上に、劇画調であるところが大きいように思う。この兄弟監督は大の日本漫画ファン(『キャプテン翼』を絶賛)であり、その造詣が本作のカットやキャラクター造りに発揮されているように感じた。


開会式に来日ゲスト勢揃い(左からロベルト・デ・パオリス、レオナルド・ディ・コスタンツォ、ルチャーノ・リガブエ、カシャ・スムトニャク、マネッティ・ブラザーズ、アントニア・ピアッツァ、シドニー・シビリア、ジャズミン・トリンカ、ドメニコ・プロカッチ)

<イタリア映画祭2018>
会期:4月28日(土)~5月5日(土・祝)
会場:有楽町朝日ホール(千代田区有楽町2-5-1 マリオン11階)

<イタリア映画祭2018:大阪>
会期:5月26日(土)~27日(日)
会場:ABCホール(大阪市福島区福島1‐1‐30)

主催:イタリア文化会館、朝日新聞社、イスティトゥート・ルーチェ・チネチッタ
後援:イタリア大使館 協賛:FCAジャパン株式会社、フェラガモ・ジャパン株式会社、コスタクルーズ日本支社
協力:株式会社 帝国ホテル、アリタリア-イタリア航空
運営協力:有限会社エミュー/宣伝協力:樂舎/字幕協力:アテネ・フランセ文化センター
公式サイト:http://www.asahi.com/italia/2018/

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