『血観音』楊雅喆(ヤン・ヤーチェ)監督インタビュー

相手への支配を美しい言葉で包み隠す文化がある

ひとりの女性とふたりの男性の30年にわたる友情と愛情を描いた『GF*BF』で観客の心をほろ苦い感動で満たした楊雅喆(ヤン・ヤーチェ)監督。待望の新作『血観音』(原題)は、台湾政財界のフィクサーという顔を持つ古物商の女性一家を主人公にした愛憎渦巻くサスペンスで、昨年の台湾金馬奨で最優秀作品賞、最優秀主演女優賞(カラ・ワイ)、最優秀助演女優賞(ヴィッキー・チェン)など主要部門を席巻した。
3月9日から18日の日程で開催された第13回大阪アジアン映画祭にその話題作を携えて登場したヤン監督。製作の裏側からキャスティング秘話まで、たっぷり語っていただきました。

ヤン・ヤーチェ監督


——題材に女性フィクサーとその家族の関係を選んだ理由を教えてください。

楊雅喆監督(以下、楊):興味を持ったきっかけは、「白手套」(白手袋=フィクサーの意味)という役割の人たちがどうやって任務を遂行するのか書かれた文章を読んだことでした。白手套というのは、中国で1000年以上前の宋の時代から存在する職業です。白手套がからむ贈収賄を「雅賂」(yahui)と呼んだりするのですが、美しいもので汚職を包み隠しているんですね。男が女を支配しようとするときも同じです。中国では昔から、相手への支配を愛という美しい言葉で包み隠す文化があります。

この映画の女性プロデューサーからは、「母と娘の映画を撮って」と求められていたので、私は殺人事件に絡むフィクサーの暗躍と母娘の話をどう結びつけようかと悩みました。そこで思いついたのが、「あなたのためなのよ」という母の娘に対する支配をテーマにすることです。子どもを支配したい親は「私はあなたの将来を思ってやってるの」と騙しますよね。

——恵英紅(カラ・ワイ)さんが演じる棠(タン)夫人は古物商ですが、「白手套」というのは古物商であるケースが多いのでしょうか?

楊:そうですね。日本や韓国は違うようですが。この映画の準備中、何人もの日本の友人にも話を聞いたのですが、賄賂は直接現金でやり取りされることが多いと言われました。

中国の古い“文化”が最もよく継承されている土地は台湾です。台湾の政治家のマネーロンダリングは見事ですよ。近ごろは台湾にならって、中国でも同様のやり方をする人が増えているみたいですが。

——現在の台湾でも、映画の中のような汚職は横行しているのでしょうか。

楊:あらゆる手段で贈収賄が行われています。映画のように骨董品を使わない場合、チャリティー基金を設立してカモフラージュにするケースがありますね。

——実はそうした汚職への批判が盛り込まれたこの映画ですが、台湾での公開後、観客からどんな反応がありましたか?

楊:まずこの映画をつくる段階でちょっとした“小技”をつかって出資者を説得し、宣伝段階でも工夫して観客をミスリードしました。つまり、最初は政治を描いた映画ではなく、コワい女たちの話だとPRしたんですね。後宮の女たちを描いた「宮廷の諍い女」という中国の歴史ドラマがありましたが、まずはあのドラマのようなパッケージにして宣伝しました。汚い言葉を使いますが、観客はゲスい女たちの話が大好きですから(笑)。でも、いざ見てみると、実際の政界の事件をモチーフにしていることに気づく仕組みです。公開後はネットなどでさまざまな議論を呼びました。

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