『長江 愛の詩(うた)』楊超(ヤン・チャオ)監督インタビュー

「アート系映画の使命は、映画という芸術の発展のために絶えずトライし続けること」

——そもそも、長江を舞台に映画を撮ろうと思ったきっかけは?

楊:私は淮河(河南省が水源の川)の近くで育ったので、川というものに対して、日常を超越した考え方を持っています。川と水が好きなんです。映画監督になってから、ずっと中国最大の川の映画を撮りたいと思っていたので、登場人物やテーマが決まるずっと前から、長江全域を1本の作品の背景にするという考えは持っていましたね。

——本作の企画が立ち上がったのは2008年だとうかがっています。翌2009年には三峡ダムが完成しますが、三峡ダム建設についてはどんな気持ちをお持ちでしたか?

楊:三峡ダム建設に対する私の意見は、中国の一般的な知識人たちと同じで、造るべきではなかったと思っています。この映画ではダム建設について、経済的、社会的、環境面におよぼした影響についてはフォーカスせず、「美の破壊」という角度から捉えています。主人公の船がダムを過ぎたあとから、アン・ルーの姿が見えなくなりますよね。つまり、人間による巨大な工業プロジェクトが、古から存在した長江の美しさや時間を消滅させてしまった。本来、長江は20年という時を超越するような美しい愛の物語が生まれるような、超常的な物事が起こり得る場所だったのに、巨大建造物の建設によって、その様相を変えられてしまったのです。

——長江全域をカメラに収めるとなると、時間も資金もかかりますよね。

楊:クランク・インの時からこの作品は、「(ホウ・シャオシェン監督の)『黒衣の刺客』以外で最もカネのかかるアート系映画」だと言わていました(笑)。最初から多額の予算がかかると計算していました。完成までに月日を要したのは、その資金を調達できなかったからです。まず予算の半分が集まったところで撮影をスタートし、80%を撮ったところで資金が尽きました。それから足りないお金を集め、再び撮影をスタートしました。

©Ray Production Limited, Lemon Tree Media Company Limited.

——主演のチン・ハオさんは、ロウ・イエ監督の『スプリング・フィーバー』(09)や、今月24日から日本でも公開されるチェン・カイコー監督の『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』など、著名な監督の作品に引っ張りだこの実力派俳優です。長期にわたる撮影には協力的でしたか?

楊:もちろんです。でも、「これまでの出演作で一番キツい撮影だった」と言われました。彼が冗談でこう言うのです。「撮影中は“五星級郵輪(五つ星クラスのクルーズ船)”に宿泊できると聞いて現場に行ったら、“五星”という名前の船だった」って(笑)。実際、そんな悪い船じゃなかったですよ。彼がキツいといったのは、3カ月もの期間、船の中で過ごさなければいけなかったことです。たとえどんなに豪華な船でも、長期間いれば牢獄にいるような気持ちになりますからね。しかも、季節は寒い冬です。

——チン・ハオさんの出演作を何本も見てきましたが、この映画の彼が一番魅力的だと思いました。

楊:私もまったく同意見です。中国公開時も女性の観客から同様の感想をもらいました。チン・ハオはもともと、年齢を重ねるごとに魅力を増していくタイプの俳優です。善と悪、両方の顔を表現できる魅力があります。それに、ちょうど今が最も良い年齢ではないでしょうか? この映画の撮影に当たっては、普段より十数斤(1斤=0.5キロ)体重を増やしてもらいました。船乗りである主人公の船上生活は退屈で、食べることが日々の大きなウェートを占めるはずですから。それから、髭を生やし、船乗りらしい見た目にしてもらったことで、キャラクターにとても厚みが出ましたよね。

——演技面では、どんな要求をしたのでしょうか?

楊:チン・ハオを選んだのは、彼がリアルでピュアな演技をする俳優だからです。中央戯劇学院を出ていますが、舞台俳優がやりがちなオーバーな芝居をしません。カメラの前では完全に自由で、真に迫った芝居を見せます。この役を演じるに当たっては、船舶の運転を学ぶなど、いろいろな準備をしてくれました。

1 2 3 4

トラックバック URL(管理者の承認後に表示します)