【TNLF】チーム・ハリケーン

映画と。ライターによるクロスレビューです。

作品紹介

©Annika Berg

デンマークのティーンから圧倒的な支持を受ける今最もパンクなユースドラマ。8 人の少女たちの普通の日常を先鋭的な映像感覚で表現。ビッチの定義から始まりジェンダー、摂食障害、理由なき不安など彼女たちを取り巻くあらゆる事象が、スマートフォンをフリックするようなスピード感で展開されていく。
※2017年スウェーデン・アカデミー(グルドバッゲ)賞:作曲賞

クロスレビュー

鈴木こより/“インスタ映え”の裏にある彼女たちの本音度:★★★★☆

ユースセンターという日本ではあまり見かけない施設に彼女たちの居場所はある。家族や学校に馴染めずにいる多感な少女たちは、同じ悩みをもつ仲間と孤独を共有し、持て余したエネルギーを表現していく。彼女たちのアートはカオスでグロテスクでパワフル。その善し悪しはともかく、SNS全盛の時代を生きる少女たちにとって必然ともいえる”承認欲求”に圧倒される。否、むしろ、”いいね!”の数で即ジャッジされてしまう残酷な時代への抵抗なのかもしれない。けれど少女の悩みというのは、いつの時代も基本的には同じもの。親の期待に応えられない葛藤、友人に感じる違和感、カロリーとの闘い、将来への恐怖。女性の承認欲求とは、自立が許されなかった時代に生きる手段として身についた本能的なものだろうと思う。それが時流とともにカタチを変えていく瞬間を、うまく切り取って表現した作品だと思う。

藤澤貞彦/若い女の子の感覚満載度:★★★★☆

カラフルな色が画面からはじき出ている。POPアートのような独特の色彩感覚。赤やオレンジ、紫、それらが光輝く緑に溶け込んでいく。自然もどこか人工的に見える。映画全体が、女の子の部屋のよう。これはアニカ・ベウ監督の短編映画『Sia』を観ても同様で、彼女の個性と言えるものかもしれない。『Sia』は老女の話で、ゆったりとしたリズムで進んでいくのに、死が不気味にその口を開けていて、どこか切羽詰まった感じがあるのに対し、『チーム・ハリケーン』は、スピード感あるカット割りなのに、逆にたっぷりとあるティーン・エイジャーの時間感覚が流れている。これはネット世代の感覚。それが目まぐるしく変わるカットを形成しているに過ぎず、それは現実に流れている彼女たちの時間そのものではない。仮想空間における時間感覚とでも言えようか。けれどもそのアンバランスな感覚こそが、彼女たちの時間の肌感覚に近いのである。それ故に、若い時に誰もが感じる孤独感と共に、彼女たちには確かに等身大の自分たちがそこに存在していると感じられたことだろう。逆に言えば、時間の感覚の違う自分が、急に年寄りになった気分がしてしまったのである。

トーキョーノーザンライツフェスティバル 2018開催概要

映画祭会期:2017年2月10日(土)~2月16日(金)
会場:ユーロスペース
主催:トーキョーノーザンライツフェスティバル実行委員会
公式サイト:http://tnlf.jp/ (映画祭以外にもイベントが盛りだくさん。詳しくはこちらから)
Face book:https://www.facebook.com/tnlfes
Twitter:https://twitter.com/tnlfes
予告編:https://youtu.be/vIDxXbvoE2Y
※チケットはユーロスペース公式ウェブサイト、劇場窓口にて上映3日前より販売!
一般1,500円、学生・シニア・ユーロスペース会員1,200円
詳細はhttp://tnlf.jp/ticketにてご覧ください

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