【TNLF】がらくたヘリコプター
作品紹介
修理に出していた柱時計を離れて暮らすおばあちゃんに届けることになったエネサは、兄弟のバキ、サスカと共に約1000 ㎞に渡る旅に出る。ロマ族の主人公たちが道中で遭遇する人々やアクシデントをドライなユーモアで描き出す。モノクロの詩的な映像と叙情的なオーケストラ・スコアをオフビートに転換させたロードムービー。
※2017年スウェーデン・アカデミー(グルドバッゲ)賞:作曲賞
クロスレビュー
藤澤貞彦/がらくたほど素敵なものはない度:★★★★★
この映画は無駄なもので溢れている。世界一大きなチーズスライサー、デッキブラシ、椅子のオブジェ。鳴らない柱時計、退屈しのぎのプチプチ、クロスワード。そもそもおばあちゃんに修理が終わっていない柱時計を届けるため、孫たちが3人も車に乗って1000キロも旅をすること自体が、究極の非効率なのである。冒頭ヘリコプターから落とされたコンテナの中身もきっと、ガラクタなのだろう。これは観客へのプレゼント。これから始まる映画の中身がここに詰まっている。どんなガラクタでも無駄なものはない。世間から見捨てられたものの中に宝が眠っている。そんな声が聞こえてくる。それは、多くの人が気づかないことを気づかせてくれるかもしれない。効率化というと聞こえはいいが、それは人間性を失わせるもの。経済至上主義や全体主義を生む。ナチスの絶滅収容所は特定の人間自体を無駄としてしまったという意味で、その究極に位置する。ロマたちもその時代苦難を味わった。ゆったりとして、妙に可笑しいスケッチの裏側には、彼らの悲しい歴史が潜んでいる。勿論おばあちゃんの見た悪夢の中にも。人にはがらくたが必要なのである。
鈴木こより/この国(スウェーデン)の未来は明るい度:★★★★★
独特の様式美を感じる作品である。モノクロのカットに詩的なセリフ、それを繋ぎ合せたイメージ。登場人物たちはクロスワードパズルを解いているけど、観客も同じように、この映画の問いに対する答えを考える。与えられたキーワードと余白を堪能しながら、次第にスウェーデンという国のイメージが浮かび上がってくる。「大きなゴミ処理場」という言葉が出てくるので終映後に調べてみたら、この国には「近隣諸国からゴミを輸入する」という変わった政策があるようで、他所で不要とされているものをエネルギーに変えるという発想に長けていることがわかる。さて、主人公のルーツはロマ族である。映画とは直接関係ないが、この国では今、ロマの物乞いが路上に溢れていて問題視されているという。でも、この国はきっと前向きに取り組んでいくのだろう。ちなみにこの監督、とっても素敵なツリーハウスを建てて、それを撮ったドキュメンタリー (The Tree Lover) が東京国際映画祭2009のnatural TIFF部門で上映されている。今後も注目していきたい監督である。
トーキョーノーザンライツフェスティバル 2018開催概要
映画祭会期:2017年2月10日(土)~2月16日(金)
会場:ユーロスペース
主催:トーキョーノーザンライツフェスティバル実行委員会
公式サイト:http://tnlf.jp/ (映画祭以外にもイベントが盛りだくさん。詳しくはこちらから)
Face book:https://www.facebook.com/tnlfes
Twitter:https://twitter.com/tnlfes
予告編:https://youtu.be/vIDxXbvoE2Y
※チケットはユーロスペース公式ウェブサイト、劇場窓口にて上映3日前より販売!
一般1,500円、学生・シニア・ユーロスペース会員1,200円
詳細はhttp://tnlf.jp/ticketにてご覧ください