【TNLF】グッド・ハート

映画と。ライターによるクロスレビューです。

作品紹介

グッド・ハート

©Icelandic Film Centre

ニューヨークでバーを経営する老齢のジャックは、心優しいホームレスの青年ルーカスを雇う。孤独だったジャックは心を開き始めるが、ルーカス に恋人が出来たことでふたりは対立してしまう…。ポール・ダノ主演。カ ウリ監督がSlowblow 名義で楽曲を手掛け、アウトサイダーたちにそっと寄り添った心温まるドラマ。
※2011年アイスランド・アカデミー(エッダ)賞:監督賞、脚本賞、衣装デザイン賞、美術賞

クロスレビュー

藤澤貞彦/幸福のオセロ度:★★★★☆

心臓を病んだ孤独なバーの店主が、自殺未遂をした浮浪者の心優しき青年を助ける。タイトルの『グッド・ハート』のハートは、バーの店主の心臓と青年のハートでダブルミーニングになっている。ダーグル・カウリ作品には、処女作の『氷の国のノイ』以来100%のハッピー・エンドというものはない。常に幸せと不幸が背中合わせなのである。まるでオセロのように。もはやこれは彼の人生哲学だと言ってもいいだろう。この作品は、浮浪者の青年が可愛がっている子猫と、バーでクリスマスのディナーのために飼われているアヒルに象徴されるとおり、命がひとつのテーマになっている。故にどの作品よりも、その幸と不幸の落差は重い。しかし、人生とはそんなものだとでも言うかのように、そのタッチはあくまでも軽く、ユーモアに満ち溢れている。花屋は人の幸福に奉仕しているのに、自分は幸せが見つけられない。キャビンアテンダントとして研修を重ねた女性は、飛行機に乗るのが怖くて、会社を首になる。皮肉ではあるけれど、彼はいつでもそんな生き方しかできない人たちを肯定する。そんなシニカルさと優しさが、カウリ監督作品の魅力なのだ。これはその究極の作品である。

鈴木こより/生き残るヒントは路地裏の酒場にあり!?度:★★★★★

タイトルにもあるハートがキーワード。心の問題と心臓の病を軸に、毒の効いたユーモアで死生観が描かれる。人間も動物も、男も女も、平等に与えられたひとつの命をめぐって、棄てられたり拾われたり、喰ったり喰われたりしながら生きている。命とは、それに執着する者に寄り添うものなのだろうか。
大都会の裏道を仔猫のように彷徨うホームレスの青年は、孤独な老いぼれマスターに拾われ、バーの後継者としてその心技を叩き込まれる。頑固なマスターや路地裏の人間模様に揉まれることで、心優しい青年もその極意を身に付けていく。その過程を繊細に演じ分けるポール・ダノが素晴らしい! が、クリスマスのアヒルのシーンに象徴されるように、喰う側になりきれなかった青年の運命があまりにも皮肉で・・・。奇想天外な動物の演出が冴えているカウリ監督だが、今作では名言続出の酒場哲学にも唸らされた。

トーキョーノーザンライツフェスティバル 2018開催概要

映画祭会期:2017年2月10日(土)~2月16日(金)
会場:ユーロスペース
主催:トーキョーノーザンライツフェスティバル実行委員会
公式サイト:http://tnlf.jp/ (映画祭以外にもイベントが盛りだくさん。詳しくはこちらから)
Face book:https://www.facebook.com/tnlfes
Twitter:https://twitter.com/tnlfes
予告編:https://youtu.be/vIDxXbvoE2Y
※チケットはユーロスペース公式ウェブサイト、劇場窓口にて上映3日前より販売!
一般1,500円、学生・シニア・ユーロスペース会員1,200円
詳細はhttp://tnlf.jp/ticketにてご覧ください

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