トーキョーノーザンライツフェスティバル2018が2月に開催

~国別・独断と偏見の映画祭鑑賞ガイド~

ポスタートーキョーノーザンライツフェスティバルの季節が今年もやってきました!2018年2月10日(土)から2月16日(金) に渋谷のユーロスペースにてJAPAN PREMERE8本を含む14作品が上映される他、「シバノジョシア・アイスランド写真展」、「アイスランドの音楽と暮らし」など関連イベントも盛りだくさん。協賛企画として渋谷駅周辺の飲食店では、北欧ビールフェアなどの催しも行われます。ここでは、上映される映画にスポットを当てて、その見所をご紹介します。

スウェーデン

「FOCUS OF SWEDEN」

スウェーデンと日本は今年で外交関係樹立150周年を迎えます。それを記念し、今年のスウェーデン映画はサイレントから現代まで、力の入ったプログラムが並びました。

『一番強い者』(29年)

一番強い者1944年アルフ・シェーベルイ監督は、映画会社の社長からひとりの若者を預けられる。この若者のシナリオを映画にしてやってほしい。ふたつ返事で監督を引き受けた作品は『もだえ』。その若者の名前は、イングマール・ベルイマンだった。戦後のスウェーデン映画界の復興は、この時始まった。そのひとつをとっても、シェーベルイ監督はスウェーデン映画史において輝ける存在である。

『一番強い者』は、その彼の監督第1回作品である。元々は演劇を志し、舞台俳優としてスタートしたシェーベルイ。カメラマンのアクセル・リンドブロム(ギュスターフ・モランデル監督作品のカメラマンとしても知られる)が、自身北極で撮影した記録映像を劇映画化するための共同監督を探していたのに応じる形で、映画監督としてデビューすることになったのである。

この作品の評判は素晴らしいものであったが、その時スウェーデン映画界はすでに斜陽状態だったため、彼は2作目を作ることができないまま1940年まで映画界から遠ざかり、ラジオ番組のディレクターや、王立劇場第1演出家の仕事をすることになったのだった。そういう意味では、彼はスウェーデン映画界の栄枯盛衰と共に映画人としてのキャリアを歩んだともいえる。また、スウェーデン演劇界最高の地位で仕事をしつつ、映画監督としても成功したという点では、ベルイマンの先輩格のような存在であるともいえるだろう。

 北極の荒々しい自然を捉えたドキュメンタリー部分と、演劇界で培われたドラマ演出の部分、本来であれば異質の世界が、モンタージュによって見事に融合する。当時としては実験的ともいえるこの作品世界が、柳下美恵さんのピアノによってどのように彩られるか。それも今回の見どころ、聴きどころとなっている。

『がらくたヘリコプター』(15年)

©Anders Bohman

スウェーデンとロマ族というのは、イメージとしてあまり結びつかないかもしれない。それでもスウェーデンに初めてロマの人たちが現れたのは15世紀と言われており、その歴史は比較的古い。人口も2万人いると言われている。

そもそも、他のヨーロッパ諸国と比べてスカンジナビア半島のロマ人口は少ないのだが、それでもスウェーデンは、北欧諸国の中では突出して多い。それにも関わらず、フィンランドのカーロと呼ばれるロマの人たちの文化については語られることがあっても、スウェーデンのロマの文化ついては、あまり目にすることがなかったので、大変珍しく興味深い。(自分が知らないだけかもしれないが) 近年東欧での迫害を逃れて、フィンランド、スウェーデンへと移住するロマも増えているという。そうした中で、本作が作られたのかもしれない。

ヨーナス・セルベリ=アウグスツセーン監督は、今のところこれが唯一の長編映画作品ということだが、これまでに短編映画はたくさん作っている。予告編を観ていると、どこかジム・ジャームッシュ的なロード・ムービーを思わせる、とぼけた味わいもある。

『アバ/ザ・ムービー』(77年)

アバ『マイライフ・アズ・ザ・ドッグ』(85年)で一躍日本でも有名になったラッセ・ハルストレム監督。それより遡るところ7年前、すでに彼の監督作品『アバ/ザ・ムービー』は公開されていたのである。日本でも当時のABBAの人気は大変すごく、ラジオやテレビで彼らの曲が流れない日はなかったほどだ。

この作品は、単にABBAの豪州ツアーを追うというだけではなく、地元ラジオ局のDJが独占取材に挑むべくアタックをかけるドラマも挿入されており、今観ると当時の時代の雰囲気までが立ち昇ってくるようであり、そういう意味でも興味深い作品となっている。ABBAのファンはもちろんのこと、そうでない人にもお勧めしたい作品だ。
※2月4日(日)LOFT9ShibuyaにてABBAN(ABBAトリビュートバンド)スペシャルライブ決定!詳細は公式サイトをご覧ください。

『ストロベリー・デイズ』(17年)

©Mikolaj Tadeus Urbanski

スウェーデンの夏はベリーの収穫期、8月のブリーベリー、ラズベリー、6月~7月のイチゴなど。収穫作業は、肉体労働のうえ賃金も低く(収穫量に応じた歩合制)また、収穫期が短いので労働時間は早朝から夜遅くまで続くという過酷なもの。従ってスウェーデン人でこの仕事をやる人はほとんどいない。そこで外国からの季節労働者が頼りとなる。タイ人、ポーランド人、ロシア人、ベラルーシ人などが多い。

近年では、あまりの差別的な扱いに暴動が発生するなど、劣悪な労働条件が社会問題になっている。これは、そうした現実を背景にした、両親と共に季節労働者としてスウェーデンにやってきた15歳の少年の、ひと夏の恋物語である。

ヴィクトール・エーリクソン監督は、2002年脚本家としてデビュー、多くのテレビ作品を手掛け、本作は満を持しての初の長編映画デビュー作である。サンタ・バーバラ国際映画祭スタンド・アップ賞を受賞。

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