「山崎バニラの活弁大絵巻inゆめりあ」レポート
「映画を聴きに行こう♪大正琴&ピアノ弾き語りで味わう不思議なエンターテインメント!」をコンセプトにした「山崎バニラの活弁大絵巻inゆめりあ」が、2017年12月10日(日)に開催された。前売りはすべて完売し、当日券なしという大盛況。また、大泉学園駅前のゆめりあホールという場所柄からか、お子さん連れや家族連れの観客も多く、会場は一般映画館でのサイレント映画上映とはひと味違った、アットホームな雰囲気に包まれていた。「本日はご来場いただき誠にありがとうございます。活動写真弁士の山崎バニラでございまーす。満員御礼ありがとうございまーす」という元気な声(ヘリウムボイスと呼ばれる)で、お馴染みの金髪和服のスタイルをした山崎バニラさんが登場すると、会場から大きな拍手が起こり、ショーが始まった。
最初は山崎バニラさんによるオリジナル動画『活動写真いまむかし』(2011年/13分)が上映された。「声優は一つの役を演じることが多いですが、弁士は一人で全部の役を演じます。さらに弁士は自分で台本も書きます。さらに私は自分で楽譜も書きます」それだけでなく、この作品は、ご自分でパーツを買ってきて組み立てしたという高性能の自作パソコンで動画を編集、キュートなイラストやBGM、脚本もすべて自作という究極のオールワンマン動画なのだ。「現役の活動写真弁士は約10名、なぜこんなマニアックな職業に就いてしまったのか。そもそも映画とはどういうところから始まったのか」途中、エジソン社キネトスコープ時代の『中国人の洗濯屋』リュミエール兄弟の『列車の到着』アニメーションの『のらくろシリーズ』などの動画も挿入され、バニラさん自身の体験、活動写真弁士の始まりからサイレント映画の終焉までが、初心者にも楽しくわかりやすく解説されていて、自然に引き込まれてしまう。
続いてはいよいよ当時のサイレント映画『雷電』(牧野省三監督/1928年/18分)の上映。「牧野省三監督は日本映画の父と呼ばれる人で、この作品は遺作となります。この人はわかりやすく言いますと、津川雅彦さんのおじいちゃんにあたる方です。主人公の雷電は江戸時代に実在した力士で史上最強とも評される力士です。身長197センチ体重172キロと、当時としてはものすごく大柄です。土俵人生21年間総取り組み数285のうち負けたのはわずか10番の記録からわかるように、常に強かったということが驚きです。しかしなぜか横綱になれませんでした。理由は諸説あるのですが、こんな理由だったのではというのが本作の内容です」あまりにも強すぎて憎まれ役だった雷電。母がそんな息子を心配して、どうか一度負けてくれと頼んだ八百長相撲。相手はよりによって、マキノ省三監督のご長男マキノ正博扮するド素人のヘナチョコ俄か力士。
「雷電為衛門、明和4年信濃国小県郡大石村出身、相撲人生21年勝率何と9割6分5厘、3つの禁じ手が課せられたという伝説もある雷電が本日相手にするのは、相撲を取るのはこれが初めて、医者と言っても藪医者の藪が嶽」
バニラさんの名調子と大正琴が場を盛り上げ、触れ太鼓の響きが相撲場の雰囲気を見事に醸し出す。「おい出るなー、いやー、なぜ出さぬ―」どうしたら勝たないで済むのかなどという、初っ切りもお辞儀の珍相撲に、場内は爆笑の渦に包まれた。
2018年1月15日
[…] 映画情報サイト『映画と。』に記事を掲載していただきました!→「山崎バニラの活弁大絵巻inゆめりあ」レポート 次回公演「山崎バニラの活弁大絵巻2018~突貫マザー」の告知もしていただいてます。是非ご覧くださいませ。ライターの藤澤貞彦さん、ありがとうございました! […]