こいのわ 婚活クルージング

電子機器を捨てよ、海へ出よう!

© 2017「こいのわ」製作委員会

中国地方屈指の電器メーカーの社長だった門脇誠一郎(風間杜夫)は、ある日社長を解任される。そこで彼は心機一転、クルージングの会社を設立するとともに、自分自身第二の人生のパートナー探しを開始するのだった。いわゆる婚活である。

確かにいま婚活が注目を浴びている。生涯未婚率が、2015年の調査で、男性が23.4%、女性が14.1%になったというのがつい最近、ニュースで話題になっていた。男性のおよそ4人に1人、女性のおよそ7人に1人が生涯未婚ということになる。さらに言えば、国立社会保障・人口問題研究所の推計だと、約20年後に当たる2035年には、生涯未婚率は男性30%、女性20%になるという結果が出されている。個人差はあるものの一般的には女性は、35歳を過ぎると、男性も40歳を過ぎると結婚しにくくなると言われていることから、こういうデータが出されているのだろう。こうしたことに、多くの人が強い危機感を抱いている。

© 2017「こいのわ」製作委員会

そうしたことから、広島では県を挙げて婚活に取り組んでいるという。その名も「みんなでおせっかい!『こいのわ』プロジェクト」元々この作品はそれにインスパイアされてできたものだ。それ故に広島市や地元の住民の方々も全面協力していて、ご当地映画といった趣もある。だが、それ以上にこの作品が興味深いのは、まさに先に挙げたデータを踏まえ、婚活する女性(片瀬那奈)の年齢を35歳としているところである。結婚しなければという焦りを内心抱えつつ、一方仕事ではキャリアも積んできたことから、今さらどうなのだろうという複雑な思いを持った彼女を、もう一人の主人公にしているのだ。

一方、門脇のほうは65歳と年齢が高めに設定してある。敢えてこの年齢設定にした理由は、いずれ介護の問題が年下の奥さんのほうに覆いかぶさってくるという、シビアな現実を踏まえてのものである。それに加えて、彼は金持ちという設定になっている。その不利な条件下であっても、金持ちであるということは、当然ながら彼と結婚したいと願う相手方に、打算が生じる可能性が高くなる。そうすることでこの作品は、単に相手を見つければそれでよしということではなく、結婚の本当の価値までをも問おうとしているのである。

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