【FILMeX】ジョニーは行方不明(コンペティション)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

【作品紹介】

同じ男あての間違い電話を何度も受けた若い女性は、次第にこの男のことが気になってくる。やがてインコの失踪を契機に、彼女の思いがけぬ過去が明らかに……。ホウ・シャオシェンのアシスタントを務めたホァン・シーの監督デビュー作。台北映画祭で4賞を受賞。
(東京フィルメックス公式サイトより)

【クロスレビュー】

藤澤貞彦/それぞれのジョニーへの伝言度:★★★☆☆

台北で一人暮らしをする若い女性に度々かかってくる間違い電話。「ジョニーはそこにいますか」元妻から、友達から、家族から。この作品の邦題(英題)の由来はそこから来ている。いつも留守にしている、どこかの誰か。もしかしたら、彼らの言葉は本人には届いていないのかもしれない。この映画の主人公たち、インコを家族のように可愛がる若い女性、発達障害の男の子、肝心な時に車がエンコしてしまう不器用な若い男。それぞれが自分の中にジョニーを抱えて生きている。ジョニーとは人生のどこかで見失ってしまった、本来なら近くにいたはずの人を象徴するもの。物語の中で、彼らの特に何が変わるわけでもない。それでも台北を流れる川のように、人生は続いていく。水たまりに絶えず描かれる波紋のように心は揺らぎ続けるが、そんな彼らを台北の街が優しく包み込んでいる。そんな味わいの作品である。

折田侑駿/なぜか感じてしまうノスタルジー度:★★★★★

人々が交錯する巨大都市・台北を舞台に、青年、女性、少年、それぞれに過去を抱えた三人の主人公の人生が交差していくさまを、監督の温かいまなざしを通して見ることができる。「距離が近すぎると、人は衝突する」「人との距離が近すぎると、愛し方も忘れる」。劇中で主人公のひとりである青年がくちにする言葉だ。この言葉が示す通り、三人は絶妙な距離感で時間を紡いでいく。遠くにネオンの明かりを感じながら、触れるか触れないかの距離感で橋を駆ける、男女の姿からあふれる多幸感には思わず涙腺が潤んだ。
彼らの今後が、どのようなものになっていくのかは分からない。ただ、ひとつ分かっているのは、ラストで姿を現す彼らと背景である台北の姿が、あまりに美しいということだけだ。
エンドロールが流れ始めると、優しい気持ちでいっぱいになった。



▼第18回東京フィルメックス▼
期間:2017年11月18日(土)〜11月26日(日)
場所:有楽町朝日ホール・TOHOシネマズ日劇
公式サイト: http://filmex.net/2017

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