【FILMeX】見えるもの、見えざるもの(コンペティション)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

【作品紹介】

脳障害により病院のベッドに寝たきりの双子のきょうだいを看病する10歳の少女タントリ。そんな彼女の心は真夜中に解放される。ガリン・ヌグロホの娘カミラ・アンディニがバリ島の伝説をモチーフに作り上げた幻想譚。現実と幻想が混淆した神話的な世界が美しい。(東京フィルメックス公式サイトより)

【クロスレビュー】

藤澤貞彦/イメージの魅力度:★★★★★

双子はお互いを補完しあう関係にある。10才の姉弟は目玉焼きを分け合う。姉は白身を弟は黄身を。水田の祠には卵が供えられる。これは、宮殿建設の役に立てないと嘆いていた身体の不自由な神が、卵を献上することで許されたという伝説から来ている。そんなことからか、彼女は、脳腫瘍により寝たきりとなってしまった弟と月のイメージを重ねている。まだ現実の世界に非現実の世界が滑りこんでくる子供時代、彼女はその間を自由に生き来する。神話もまた彼らの現実なのである。身体の感覚を完全に失ってしまった弟が姉と、夜中にこの祠の前で舞を踊る。満月の青い光の中で。まるでバリ島の影絵芝居のように美しい。バリ島には、月が悪霊によって食べられてしまうという伝説がある。それが弟の影絵芝居で物語られる。しかし、その結末は語られない。答えは自分で見つけてと言わんばかりに。これは、彼女が現実を受け入れていく過程を、映画ならではの表現力で綴った魅力溢れる作品である。

外山香織/卵に注目度:★★★★★

本作のキイアイテムは「卵」だ。ひとつの目玉焼きを、姉は白身、弟は黄身と分け合う双子。しかし弟が脳腫瘍で昏睡状態になって以降アンバランスが生じる。姉の手の中で生卵が砕けるシーンや、ゆで卵を食べていた姉が、黄身がなかなか出てこないことに気づき指で掘り出すが結局黄身はなかったというシーンが不穏さを表している。「黄身のない卵」はまさに弟の不在の象徴だ。一方、黄身は夜の空に浮かぶ月をも暗示させる。深夜、寝床を抜け出して弟の病室を訪ねる姉。そこで姉弟は元気に影絵で遊び、鶏の扮装で宗教儀式のように踊り狂う。夢か現か、生か死か。大人には見えない、共有できない混沌とした世界を、バリ島の伝承に由来する美しい映像で彩ったミステリアスな作品。



▼第18回東京フィルメックス▼
期間:2017年11月18日(土)〜11月26日(日)
場所:有楽町朝日ホール・TOHOシネマズ日劇
公式サイト: http://filmex.net/2017

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