【TIFF】マリリンヌ(コンペティション)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

作品紹介

女優志願のマリリンヌ。オーディションに通り映画出演が決まるが、無理難題を押し付け、執拗にテイクを繰り返す監督に我慢も限界。果たして女優の夢は叶うのだろうか?迷い、つまづきながらも女優の道を歩むマリリンヌの生きざまから目が離せないヒューマンドラマ。(TIFF公式サイトより)

クロスレビュー

ささきまり/ヒロインの表情から気持ちを読み取ることに集中せよ度:★★★★☆

ポスターにもなっている、躍動感ハンパないブレブレの宣伝写真が謎だったのだけど、冒頭からその種を明かすシーンがあって会場に笑いが。主人公マリリンヌは、確かに「与えられたもの」を持っているのに、それを形にする力のない駆け出し女優。不思議な華があって人を惹き付けるのだが、気持ちを中に溜め込む繊細さと依存症レベルの弱さが他人の加虐心理を煽り、いつもトラブルに見舞われる。男の子のように短く髪を刈られた幼いマリリンヌが雪の中で傷ついた小鳥を拾う回想シーンに、彼女の心の奥にある癒えない傷が浮かび上がって痛々しい。でも、どんな時にも必ず彼女を助けてくれる人が現れる運の良さも、おそらく彼女の「与えられたもの」の一つ。中でも先輩女優役のバネッサ・パラディの存在感が圧倒的!ラストはファンタジーのような多幸感に溢れて、表情だけで全てを語るアデリーヌ・デルミーの笑顔がみごとだった。努力が報われる話はいい。ピーター・ボグダノヴィッチ監督の『マイ・ファニー・レディ』を思い出したりもした。

富田優子/主演女優の危なっかしさも魅力的度:★★★★☆

ガリエンヌ監督、女性をよく分かっている。序盤、マリリンヌが映画の撮影直前に体調の変化に困惑して、「メ〇ド」と呟くのなんて、まさにそう。よりにもよって大事な時にどうしてなっちゃうんだろう・・・と多くの女性がそう感じたことがあると思う。そんな細かい描写に加え、マリリンヌの心情を自由な筆致で捉えている。特に『不機嫌なママにメルシィ!』でもそうだったように、舞台のような演出は見ごたえ十分。主演女優アデリーヌ・デルミーはガリエンヌ監督の抜擢に応えた演技で、その危なっかしさも含めて観客を魅了する。さらに印象的なのは、ヴァネッサ・パラディの大女優の風格っぷりや、実際に名監督として知られるグザヴィエ・ボーヴォワがヒロインの転機となる作品の監督役として出演するなど、余裕の遊びごころも感じられて、楽しく見ることができた。


【第30回東京国際映画祭(2017)開催概要】
開催期間:2017年 10 月 25 日(水)~11 月 3 日(金・祝)
会場:六本木ヒルズ(港区)、EXシアター六本木 他
公式サイト:http://www.tiff-jp.net

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