【TIFF】グッドランド(コンペティション)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

作品紹介

©Les Films Fauves – Novak Prod – Bauer & Blum – ZDF/Arte – 2017

秋の収穫期、農村にやってきた流れ者。村は男を受け入れるが、彼には秘密があった。しかし村にも秘密があることに男は気付き始める。美しい田園地帯を背景に、犯罪とエロスが入り混じり、意外な展開へと突入する驚きのスリラー。(TIFF公式サイトより)

クロスレビュー

折田侑駿/順応することへの恐怖度:★★★★☆

オープニングから画面に充満する不穏なムード。「これは何かあるぞ」的な空気に、目にするものがいちいち伏線に思えてくるほどの緊張を強いられる。流れ者である男が村に溶け込んでいくにしたがって、変わっていく村の姿(季節の変化)、男の姿。ヨソモノであるはずのこの男が、ジョークをとばし、仲間たちとともに歌さえ口ずさむまでになれば、後戻りはできない変貌を遂げることになる。ある共同体にヨソモノが加入するには、これほどの代償を必要とするのだろうか。ラストで男が見せた笑顔はたいへん清々しいが、見ているこちらとしてはかなり苦しい。いちど自宅に持ち帰り、検証すべきタイプの恐怖を味わった。

杉本結/奇妙なよそ者の受け入れ方教えます度:★★★★☆

まず、この作品はルクセンブルク映画というあまり見る機会のない土地の作品。そんな土地で起こるスリラーとはどのようなものなのかあらすじを読むだけで引きつけられる。冒頭にどこからどうみても怪しすぎる男がとある村へとやってきてうまく村の一員として溶け込んでいく。この男がなにか起こすのかと疑いながら序盤は過ぎていく。しかしどこかこの村には秘密がある。「人妻には手を出すな」と主人公が村人に忠告される真剣なシーンなはずなのにそんな村のルールにはどこの国も一緒だなとクスッとしてしまう。そしてこの作品の中で印象的なのは美しい風景。遠くにみえる3本の木となにもない土地に場面が切り替わるたびに映し出される「穀物の成長」から時間の変化を感じとることが出来た。ラスト15分はなんとなく予想出来る展開だと油断したら本当のラストにはこんな終わり方もあるのかと拍手をおくりたい気分にさせられた。


【第30回東京国際映画祭(2017)開催概要】
開催期間:2017年 10 月 25 日(水)~11 月 3 日(金・祝)
会場:六本木ヒルズ(港区)、EXシアター六本木 他
公式サイト:http://www.tiff-jp.net

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