『3月のライオン』 大友啓史監督

Blu-ray&DVDリリース記念 蔵出しインタビュー

(C)2017 映画「3 月のライオン」製作委員会

幅広い層の読者から愛されている人気コミックを実写映画化した『3月のライオン』のBlu-ray&DVDが発売中だ(【前編】発売中・【後編】10月18日発売)。9月には映画が台湾で劇場公開され、中国ではアニメ版がインターネット配信されているなど、「将棋」という日本の伝統文化をテーマにした本作には、アジアの周辺国からも熱い視線が注がれている。
Blu-ray&DVDリリースを記念し、今年6月に前後編が2夜連続上映された上海国際映画祭でキャッチした大友啓史監督の蔵出しインタビューをお届け。『3月のライオン』を観た中国の観客のリアクションや、近年現地で関心が高まっている日本のコンテンツの映像化などについてお話をうかがった。


ー『3月のライオン』は、日本独自の「将棋」という文化を題材に、じっくり人間の心の機微を見せていく作品です。中国の観客と一緒に客席でご覧になったそうですが、観客のリアクションや上映後のQ&Aの手応えはいかがでしたか?

大友啓史監督(以下、大友):ちゃんと「届いているな」と思いましたね。中国は同じ漢字文化ということもあってか、例えば二海堂がパッと扇子を出して、そこに「大局観」(村山聖九段が使っていた扇子の言葉)と書いてあるのが見えるシーンで笑ってくれる。そういう率直なリアクションは日本でもなかなかないので、中国の観客と共有できるものがたくさんあると感じました。笑ってくれるポイントも、びっくりするぐらいこちらの意図したところでリアクションが起きていたり、息をのむようなシーンは、本当に息をのむようにして見てくれたり、すごく素直に見てくれるので、作り手としてはとても気持ちがいいですよね。

ー中国では、今年だけでも既に『容疑者Xの献身』『家族はつらいよ』『深夜食堂』の中国版映画やドラマが公開・放送されていて、日本オリジナルのコンテンツのリメイクに関心が高まっています。日本の漫画・アニメの人気は高く、『3月のライオン』にも多くのファンがいるようです。

大友:中国メディアの取材でも、「漫画を映像化するときに、どんなことに気を付ければいいのか」という質問をたくさん受けましたね。

ー『るろうに剣心』も中国では原作、映画ともに人気が高いです。大友監督は、『るろうに剣心』では時代劇アクション、そして今回『3月のライオン』では将棋と、日本独自のもので世界に通用するエンターテインメントを作ってこられた。そうした方法を中国の作り手もきっと参考にしたいのではないでしょうか。

大友:それはあるかもしれません。実は『るろうに剣心』って、中国では一切公開されていないんです。けど、すごく人気があって、アクション監督を務めた谷垣健二さんに、この前、中国で作られたアクション活劇の予告編を見せられたんですけど、『るろ剣』1作目の予告編そのままなんですよ。音楽までそっくり。劇場公開されていないし、みんなネットや海賊版DVDで観てる状態なので、表立って公開された映画よりは、取り入れやすいんでしょうね。谷垣さんはこちらで“アクション・マスター”になっちゃってる(笑)。オファーがすごいそうです。

ー今の中国では巨額を投じたアクション大作、ファンタジー大作がたくさん作られていますが、似たり寄ったりの作品が多く、観客には飽きもみられる。日本映画はそんな観客の目に新鮮に映るのかもしれません。

大友:中国ってビジネスマーケットが大きいので、映画の企画も大きくなってしまう。ワンダ・グループ(大連万達集団)がハリウッドのレジェンダリー(・ピクチャーズ)を買収しましたけど、レジェンダリーのノウハウを中国に持ってくると、『グレートウォール』のようなスケールの大きな映画を作ることになる。さらにビジネスを優先して進めていくと、どうしてもそういう規模の大きな映画がメインストリームになっていく。

実際、中国の映画もエンターテインメント大作が多いと思うんです。10億人市場に向けた映画づくりになっていくので、広く大衆に届く映画はいっぱいできるけど、さまざまな趣味趣向を持った観客に届く映画は、そんなに作られていないのかもしれない。だから、日本映画がたくさん上映されるこうした映画祭に、中国でメインストリームになっている大作映画に満足できない層が駆けつけてくれるという側面があるのかもしれませんね。

映画の多様性って、実は大衆が求めていくもの。メインストリームからこぼれ落ちていくような作品を求めている層も絶対数いるわけで、中国だとそもそも人口のパイが大きいので、その層の観客数も大きくなります。今回の『3月のライオン』の上映のように、1,000人収容の劇場がいっぱいになるなんてことは、日本でもそうそうないですから。

ーお客さんから熱気を感じます。

大友:日本語のセリフを聞き、日本語のQ&A を聞いて、通訳されるより前にリアクションがある。日本の芸能をお客さんが渇望している感じがしますよね。インターネットの力もあって、日本の文化の情報が、僕たちが思っていた以上に、中国に入ってきている。日本語を勉強されている方もたくさんいて、しかももっともっと知りたいと思っている人たちが多いということを、毎回こちらにくる度に感じますね。


   【前編】発売中
   【後編】10月18日発売

『3月のライオン』
[前編]発売中/[後編]10月18日
価格:Blu-ray 豪華版 各6,800円+税
DVD 豪華版 各5,800円+税
DVD 通常版 各3,800円+税
発売元:アスミック・エース
販売元:東宝
(C)2017 映画「3 月のライオン」製作委員会

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