フランス映画祭2017来日映画人アルバム
2017年6月22日から6月25日まで開かれたフランス映画祭。今年も豪華なゲストが揃いました。終映後にはQ&Aが行われ、撮影秘話などが披露されました。その一部を、写真と共にお届けします。
『ルージュの手紙』(「The Midwife」)カトリーヌ・ドヌーヴ、マルタン・プロヴォ監督
カトリーヌ・ドヌーヴ
「この映画は皆さんを感動させ、笑わせてくれる映画だと思います。人生について、生とは何かを語っているだけではなく、死とは何かを語っている映画ですけれども、ちょっといつもとは違う切り口でその内容を伝えています」
マルタン・プロヴォ監督
「この映画の中では自由な女性と自分のうちに、閉じこもってしまっている女性を描いております。私がカトリーヌ・ドヌーブを発見したように、彼女たちもお互いを見い出し始めるのです」
(6月22日(木)TOHOシネマズ日劇1にて)
『ルージュの手紙』(「The Midwife」)
監督:マルタン・プロヴォ
出演:カトリーヌ・フロ、カトリーヌ・ドヌーヴ、オリヴィエ・グルメ
2017年/フランス/フランス語/117分/DCP/1.85/5.1ch
配給:キノフィルムズ
※2017年12月シネスイッチ銀座ほか公開
『セザンヌと過ごした時間』ダニエル・トンプソン監督
ダニエル・トンプソン監督
「脚本家として魅力を感じたのは、セザンヌです。複雑な人で性格も歪んでいる。ただ、今晩夕食を共にするとしたらゾラが良いかなって、思っています」
「子供の頃から最後の手紙まで2人の書簡はたくさん残っていますので、それらを読みました。ゾラの伝記、セザンヌの伝記もたくさん読みました。最後の手紙と思っていたものの後に書かれた手紙が出てきまして、それを基に、別離のきっかけとなった2人の再会、実際にはなかったかもしれませんが、そこは私自身が想像して付け加えてみました。こうして、私自身のフィクションというものを構築していくわけです。その過程はパズルを組み立てるような、わくわくする作業でした」
「エクス=アン=プロヴァンスでは、セザンヌが絵を描くために借りていた小さな小屋があるのですが、そこで撮影できました。パリの近郊にあるゾラが建てた家でも撮影することができました。なので撮影中は、セザンヌとゾラが、このドアのすぐ後ろにいるんじゃないかというような感覚がありました」
「ゾラ役のギョーム・カネ、セザンヌ役はのギョーム・ガリエンヌは、撮影中、とて和気あいあいとやっていたのですが、書斎での2人の再会シーンが近づくにつれて、ゾラとセザンヌの関係性が反映されて、現実の彼らの関係も、複雑でややこしい感じになっていくのを非常に興味深く、ワクワクして見ていました」
(6月24日(土)有楽町朝日ホールにて)
『セザンヌと過ごした時間』
監督:ダニエル・トンプソン
出演:ギョーム・カネ、ギョーム・ガリエンヌほか
2016年/フランス/フランス語/114分/DCP/2.39/5.1ch
配給:セテラ・インターナショナル
※9月、Bunkamuraル・シネマ他全国順次公開
『夜明けの祈り』アンヌ・フォンテーヌ監督、ルー・ドゥ・ラージュ
アンヌ・フォンテーヌ監督
「この映画は実話をもとにしています。若い女医さんが、第二次世界大戦中ポーランドに行き体験したことを、メモに残していました。そこからインスピレーションを受けて作ったものです。とても信じられない出来事だったのですが、忘れられていた、もしくは隠されていた歴史的な事実です」
「これは昔の出来事ですが、このような暴力、女性に対する性的虐待などは、今戦争が起こっている国々で今でも頻繁に起こっていることです。この映画はバチカンでも上映したのですが、フランチェスコ教皇の側近である大司教はこの作品を観て、これは私たちに教会にとっては、セラピーのような映画だ。起こったことは起こったことで、それに直面して、そこから希望を見出していかなければいけないと思うとおっしゃっていました」
「初めてルーをオーディションしたとき驚かされたのは、彼女の表情にはカリスマ性があり、少し秘めた頑固さのようなものもあり、決意のようなものも感じられたことです。当時フランスで女性の医者というのは少なかったのです。それも第二次世界大戦に戦場に赴くとなると、もっと少なかったのです。よほどマチルドは強い個性、強い意志を持った女性であろうと思っていました。ですので、そのような表情を彼女に求めました。ルーの表情はとても豊かに変わります。特に沈黙しているときの表情は本当に素晴らしいと思っています」
ルー・ドゥ・ラージュ
「マチルドがポーランドの修道院に行って驚かされたのと同じように、私もポーランドで、その国の女優さんたちの中に入っていき仕事をするという点では、似た体験をしており、彼女の感覚が少しは理解できたかなと思っています。異なっている点は、マチルドは修道女たちから拒否されたのですが、私は彼女たちから歓待を受けたということです。ポーランドの女優さんたちは、集中力も高く、細かいところまで気を配った演技をしていると感じました。修道院長をされた方は、ポーランドでは大女優であるのですが、彼女が演じるのを傍で見ているのは、とてもいい経験になりました」
「この作品は私にとっては挑戦でした。レースのように私の心の中の動きが透けて見えるように演技し、観客のみなさんに感動が生まれればいいなと思っていました。映画の途中まで、マチルドの心の中では、沢山のどうしてという気持ちがあり、そのために沈黙が多くなってしまったのだと思います。監督も言葉が少ないという点を重視しているということを言われていました。今の世の中、考えもせずにしゃべりまくる人がよくいますので、私にとっては沈黙というのはとても心地がよいものです」
(6月24日(土)有楽町朝日ホールにて)
『夜明けの祈り』
監督:アンヌ・フォンテーヌ
出演:ルー・ドゥ・ラージュ、アガタ・ブゼク、アガタ・クレシャ、ヴァンサン・マケ―ニュ
2016年/フランス、ポーランド/フランス語、ポーランド語、ロシア語/115分/DCP/1.85/ドルビーSR
配給:ロングライド
第42回セザール賞4部門(作品/監督/脚本/撮影賞)ノミネート
フランス映画祭エールフランス観客賞受賞
※8月5日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開
『エタニティ永遠の花たちへ』トラン・アン・ユン監督
トラン・アン・ユン監督
「私は原作を読んですごく感動しました。なんと時の流れの偉大なこと、雄大なことと。その時私が覚えた感動というものを伝えたいと思ったのですが、そのためには特別な映画の表現方法、かなりリスキーで大胆な方法を取る必要がありました。それでこの映画は、ストーリーらしいストーリーはなく、シーンらしいシーンもなく、心理描写も排したのです。それこそがあの感動を伝える唯一の方法だと思ったからです。だからこそキャスティングでは、俳優がスクリーンに現れた時、顔から人生や人間性を感じられるか、ということを重視しました」
「自分の映画の中では、常に家族というものが出てきていますね。私自身の家族はベトナム戦争のせいで、とても少人数なのです。私には両親と弟しかいないんです。私は家族が少人数ということについて、とても脆いという風に感じていたのです。それで、この原作の大家族に感銘を受けたのです」
「ベレニス・ベジョは女優さんたちの中で、唯一私にイラついていた人でした。撮影の最初から、私は一体何をやっているのかわからないわ、と言われました。夜、暗い中でボタンをはずすシーンがあったのですが、彼女にとってはそれがとても難しかったみたいなのです。それで私が何回か見本を示したのですが、それでも自分ができないということに彼女が苛立ちまして、私はあなたの操り人形じゃないのよって、遂に怒り出してしまいました。撮影は続けなければならなかったので、私はすぐにそこで謝りました。そういうことがあったからこそ、その後はすごく仲良くなったのですが」
(6月25日(日)有楽町朝日ホールにて)
『エタニティ永遠の花たちへ』
監督:トラン・アン・ユン
出演:オドレイ・トトゥ、メラニー・ロラン、ベレニス・ベジョ
2016年/フランス、ベルギー/フランス語/115分/DCP/2.40/5.1ch
配給:キノフィルムズ
※今秋、シネスイッチ銀座ほかにて公開
『ポリーナ、私を踊る』アンジュラン・プレルジョカージュ、ヴァレリー・ミュラー監督
ヴァレリー・ミュラー監督
「この作品は、バンド・デシネ(フランスを中心としたヨーロッパの表現方法が豊かな漫画)を原作としているのですが、バスティアン・ヴィヴェスの「ポリーナ」を映画化したいと思ったのは、私が彼を直接知っていたことと、現代の若い女性の強さを描いており、普通のバレエ映画にあるようなステレオタイプの作品ではないところに惹かれたからです」
「代役は使わず、最初に本人に踊ってもらうということを決めましたので、ダンサーで演技のできる人、俳優で踊ることができる人を求めてオーディションを重ねました。俳優とダンサーがお互いにノウハウを分かち合うことができると思ったからです。ポリーナ役のアナスタシア・ツェフツォワはもともとバレリーナで、映画は初出演です。ジェレミー・ベランガールは、パリ・オペラ座エトワールでして、ジュリエット・ビノッシュは、英国人振付家でダンサーでもあるアクラム・カーンと一緒に舞台で定期的に踊っております。ニールス・シュナイダーに関しては、この映画に出る前にアンジュランのダンス舞台に出て、ダンスを覚えてもらいました。それぞれこの映画のために、6カ月かけて準備をしてもらいました」
「この物語では、主人公を社会の中、家族の中に位置づけて、社会とのつながりや家族とのつながりも描きたいと思いました。それで、ダンスの先生が望んでいることや両親が望んでいることを受けながら主人公が成長し、花開いていくという形にしました。また、主人公を恵まれない家庭の出身であるという想定にしています。ピナ・バウシュやルドルフ・ヌレエフなど、彼女と同じ境遇にありながら、比類なき芸術的な才能を生かして、有名なダンサーになった人たちのイメージを頭に置き、ダンスを通して社会的な階級を上り詰めていくという像を考えたのです」
アンジュラン・プレルジョカージュ監督
「バレエの映像は何回か撮っていたのですが、それはもちろんフィクションとは別のものでした。ヴァレリーはとても優れたシナリオ・ライターで、監督でもあります。ダンスを題材に、一緒にフィクションを作ったら面白いかなと思ったのです」
「私は体が表現する映画を作りたいと思いました。夜暗い中であっても、自分が知っている人だったらその歩き方で、誰だかわかるものです。身体の動かし方にはその人自身の人物像が写し出されている、その人の意味を表しているのだと思います」
「ヴァレリーとシナリオを書いている間に、原作では、主人公の周りが男の人ばかりだなということに気が付きました。けれども、今の時代は女性も描くべきだということで、女性が目標にできるような人物として、ジュリエット・ビノッシュが演じる振付家を挿入しました」
(6月25日(日)有楽町朝日ホールにて)
『ポリーナ、私を踊る』
監督:アンジュラン・プレルジョカージュ、ヴァレリー・ミュラー
出演:アナスタシア・シェフツォワ、ニールス・シュナイダー、ジェレミー・ベランガール、ジュリエット・ビノシュほか
2016年/フランス/フランス語、ロシア語/108分/DCP/2.35/5.1ch
配給:ポニーキャニオン
※10月28日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国順次公開
ルー・ドゥ・ラージュ魅惑のポートレート
【フランス映画祭2017】
日程:6月22日(木)〜 25日(日)
場所:有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ 日劇(東京会場)
団長:カトリーヌ・ドヌーヴ
公式サイト:http://unifrance.jp/festival/2017/
主催:ユニフランス
共催:朝日新聞社
助成: 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本/CNC/フランス文化省/フランス外務省
協賛: Procirep/ルノー/ラコステ/エールフランス航空/スターチャンネル
運営:ユニフランス/東京フィルメックス